読書感想文『生きづらい明治社会』

 著者: 松沢 裕作(慶應義塾大学経済学部教授)
岩波ジュニア新書、 2018年刊行。

 専門は歴史学である著者が岩波ジュニア文庫で紐解く、明治時代の経済と社会。
 大隈重信後の緊縮政策による「松方デフレ」、明治の生活保護に相当する「恤救規則」、立身出世を考えの基礎とした「貧民救助論争」など、明治時代の社会を社会政策や経済事情から見ていく。
 7章からなり、それぞれのテーマを現代の事情と比較。当時の世相や状況が現代と異なり、純粋な比較にはならないことを重々前置きしながらも、分かりやすく身近に時代を引き寄せる。

 とても分かりやすかった。
 わたしは福祉の資格を取りたく、現在の憲法以前の福祉のありかたに興味があったのだけど、歴史と経済という切り口から浮かび上がる当時の福祉事情についてとても参考になった。
 岩波ジュニア文庫ということで、平易な文体とリテラシーの高いやさしい語り口で2時間程度で読了。その上内容が豊富で、非常に豊かな読書体験だった。

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