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放課後、魔法少女V

 第11話 

「もうひとりの魔法少女?」

 「――――うお、は今日も休みか・・。砂山ちり」
「はい」
あれから、うおちゃんは全然学校に来ていない。今日も朝家に寄ったのだけど、インターホンを押しても出てこなかった。うおちゃんの家族も、ずっと部屋から出てこないと心配していた。
「マキ、うおのやつ今日もいなかったのか?」
「うん。ずっと部屋に閉じこもってるみたい」
「そっか・・。なぁ、今日うおん家俺も言っていいか?」
「ほづみの気持ちは嬉しいけど、もしかしたら余計にうおちゃんを困らせるかもしれないし、手紙とかなら・・」
「いや、俺はきちんと自分の言葉でうおに気持ちを伝えたいんだ。ちゃんと謝りたい。で、なんで怒ってたのか知りたい。とにかくこのままもやもやなんて嫌だし、きっとうおだってこのままじゃないはずだろ」
「うん、きっと二人なら同じ気持ちでいて前みたいに仲良くできると思う。でも、やっぱりうおちゃんに最初に会うのは私じゃなきゃダメだと思うの。ほづみ、私を信じてくれる?」
「マキ・・・」
「きっと、また楽しく三人で通学できるから」
「マキ。悪いのは俺かもしれないんだぜ」
「ううん、憶測でしかないし、想像でしかないけどきっと私にも、なにか原因があったんだと思うの。うおちゃん、いつも言ってた『本人の言葉からしか真実にはならない』って。うおちゃんの記者魂をそばで見てきた私なら、きっとうおちゃんの本当の言葉聞けるはずだから」
「・・わかった、マキを信じる。で、俺もちゃんと本人に言葉を伝える。あの通学路(ばしょ)で」
この前までうおちゃんが座っていた席を見つめながら。私は、あの毎日を取り戻すと誓った。うおちゃん、記者魂借りるよ。校庭に強い風が吹いた、この風は向かい風なのか追い風なのか。私にはまだなにもわからなかった。

「さて、そろそろ動き出しますよ。あなたはどうするのですか?」
同じように校庭を見つめる男が、不敵に笑う。
「私は私の思うままに動くまで。マキは私が救ってみせる」
白い一羽のハトが空へと飛んで行った。


 放課後。私は、魔法少女活動である見回りを二人に任せて、うおちゃんの家へと向かっていた。今日は開けてもらえるだろうか、会えるだろうか、声が聴けるだろうか。ほづみの前では強気でいたが、いざ行動に移すと不安が押し寄せてくる。いなかったらどうしようとか、会いたくないって言われたら、もっと傷付けてしまうかもしれないとか。いやいや、うおちゃんはそんな弱くない。どんな時だって、あきらめないで取材していた。雨の日も風の日も、ずっとウメコさんのことを追いかけていた。まだ、その記者魂がうおちゃんにもあるはず。その魂があれば、私の思いだって伝わるはずだ。あきらめるな、あきらめるな。約束したんだ、私は。だから、きっとまた元の通りに三人で楽しく毎日を過ごせるはず。
「本当にそうだと思う?」
その声、忘れるはずもない。でも、なにかとても違和感があって私は振り向かなかった。そのまま前を見ていた。
「私は、絶対あの毎日を取り戻すよ」
「できないわ。いいえ、させないわ。マキ、あなたの毎日はここで終わるの。今ここで!」
後ろから強い魔力を感じる。私は急いで変身して、防御魔法を出した。
「うおちゃん、なんで!」
やはり、この声の主はうおちゃんだった。どうして、うおちゃんが魔法少女に?それにこの禍々しい魔法、もしかして。
「ええ、そのとおりよ。私、魔法少女になったの。あなたを解放するために」
「解放?どういうこと?」
「彼女も一緒よ。見て」
うおちゃんがそう言うと、木の陰からほづみが現れた。
「ほづみ!」
「マキも一緒にいこう。もう魔法少女になることはないんだ」
なにが起こっているのか。私には全然理解が出来なかった。うおちゃんの気持ちも、ほづみが言ってることも。解放?なにから?魔法少女にならない?
「マキも一緒に行きましょう。三人でならきっと行けるはずだわ。もう、いらないのよ、魔法少女なんてものは」
「待って、うおちゃん。私、なんのことだか全く」
「いい?マキ、しっかり聞いて。マキ、あなたはね
「ええ、そんなに解放されたいのならあなたは解放してあげますわ。感謝なさい。」
どこかで、聞いた声だった。透き通った透明な、無機質な。でちょっと偉そうな。
「どうして。あなた、」
それが、うおちゃんの最後の言葉だった。そのままソレは、砂になり消えて行った。
「えっ、なに、わたし、なんで、」
どうしてここにいるの?私は、誰?ここは?
「あなたは、紫堂(しどう)真希。魔法少女。いいの?こんなところにいて?放課後は、パトロールの時間ですわよ?」
「あ、そうだ。私、パトロールにいかなきゃ。ウメコさんとアリス、待たせたら悪いし」

 私は、紫堂 真希。この前まで普通の中学生だったんだけど、なんと魔法少女になっちゃったの!ちょっと乱暴だけど、仲間思いなアリスと、とってもクールで大人なウメコさんと一緒に今日も町の平和を魔法で守っちゃうぞ!


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