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放課後、魔法少女V

第9話

「夜の病院、大騒動!?」


私、マキ。魔法少女やってます。みんなは、怖いものってある?目に見えるものだったり、見えないものだったり、行動だったり、音だったりいろいろあると思うんだけど、今日はそんな怖いものの話。


 「マキ、トイレってどこだ?」
夜、鳥の姿に変身して突然やってきたほづみが、突然キョロキョロしながら言い出した。
「トイレなら、廊下出て右に行ったところにあるよ」
「あぁー、いやーそのー・・・」
すぐに出ていくかと思いきや、まだほづみはもぞもぞとしている。もしかして・・。
「鳥の姿では目立つから、そうね。虫あたりに変身したらいいんじゃないかしら?」
「いや、そうじゃなくて・・」
ウメコさんはわかっていないらしい。私のほうをじっと見て、回答を待っている。
「私もトイレ行きたくなってきたから、行こうかな。ほづみ、ハムスターになってくれない?ポケットに入れてあげるよ」
「マキ!」
「あら?マキもなの?というかなんでなの?」
「お茶飲み過ぎたかもしれませんね。あははは」
そろそろ、ほづみが限界っぽいのでハムスターになったほづみをポケットに入れて、私は松葉杖を使い、トイレへ向かった。


 少し体を浮かせる魔法を使ったおかげで、なんとかトイレまで間に合った。
「マキ、本当にありがとな。漏らすとこだったぜ」
「ううん。でも、ほづみがお化け怖いなんて意外だったなー」
「お化け?えっ、ここ出るのか?」
「またまたー、大丈夫だよ誰でも怖いものってのはあるから。私もお化け怖いもん」
「いや、俺。お化けは怖くないぞ」
「えっ?」
予想外の回答。じゃあなんで一人でトイレ行きたくなかったわけ?私、松葉杖使ってまで来たわけ?
「じゃあ、ほづみはなんで一人で行きたくなかったの?」
「虫。虫ダメなんだよ、俺」
「虫?」
「あー、そのー、学校とかこういうとこって昼もだけど、夜になると特に茶色いアレ出るって聞いてさ、怖くって」
あぁー、アレか・・。というか、もしかしてもしそれが出たら、私に退治させようと考えてたのか。無理だろ。
「まぁ、ほづみにもそんな弱点があるなんてびっくりだよ」
「マキだってお化け怖いんだろ?だったら、俺にだって弱点くらいある!」
「開き直られても・・・」
「さぁ、じゃあ帰りは俺のとっておきの魔法で病室に戻るか」
「どうやって戻るの?」
「瞬間移動」
「瞬間移動?」
瞬間移動って、いきなり病室にびゅんって飛ぶってこと。いや、ちょっと待って。
「本当に大丈夫?」
「うんうん、任せとけ。実は一回家でもやったんだけどさ。うまくいったから」
「ちょっと待って。その前にその話を詳しく聞かせて」
なんだかとっても嫌な予感がする。
「なんだよ、マキ。もしかして俺が失敗するとでも思ってるのか?」
うん、まぁだいたいそうですけど。ほづみの魔法基本的になんというか、力押しって感じだし雑だし。私は、じっとほづみを見つめる。疑いの目で。じー。
「うっ、まぁ確かにうまく着地はできなかったけど」
「やっぱりそうなんじゃん」
「で、でも今日は二回目でマキの怪我のことも考えて、慎重にやるから」
「本当に?」
「本当に!じゃあ行くぞ、もしかしたらウメコが一人で怖くて泣いてるかもしれないしな」
ほづみは、ここまでをとてつもない速さで話すと私の許可もなく聞こえないくらいの速さで呪文も言い終えてしまった。
「ちょ」
私が言えたのは、この二文字だけだった。


 目をあけると、そこは病院のベットだった。しかも、ちゃんと私のベット。ほづみは、ハムスターの姿で、ベットに備え付けられている机の上で倒れていた。腰を相当強くぶつけたのか、うずくまっていた。
「大丈夫、ほづみ?」
「だ、大丈夫だ。これくらいは想定内・・・痛い」
自業自得のような気もするけど、一応私のことを気遣ってくれての行為なので。
「運んでくれてありがとう。背中、シップ貼る?たしか引き出しに入ってた気がする」
「大丈夫だ、ちょっとうずくまったら治るから。ちょっとさすってくれ」
「はいはい」
しばらく、さすっていると痛みがひいてきたのか。また元の元気を取り戻した。
「なんか、お見舞いに来たのに迷惑かけて悪かったな!」
「ううん、二人に来てもらえたの、私うれしかった。昼間はうおちゃんしか来なかったから、もしかしたら海なくなったの、怒ってるんじゃないかって思ってたの」
「怒る?なくなる?なんで?」
ほづみが、きょとんとした顔で私を見る。まったく意味が理解できないといった感じの。
「えっ、足折れてるし泳げないから」
「でも、治るんだろ?」
「うん。治るよ」
「じゃあ大丈夫じゃねーか。夏じゃなくても、冬に行けばいいんだしな」
「いや、冬は寒いよ」
「オーストラリアは、熱いぞ!」
やはり、世界のほとんどを支配している(かもしれない)お金持ちのお嬢様だったんだなと。改めて認識することができた。足治ったら、パスポートの取り方聞いておこう。
「あれだけ、ウメコに指導してもらって水着選んだんだもんな。絶対に海は行くぞ」
「うん。ウメコさんも」
あれ?そういえばウメコさんどこに行った?
「ウメコさん、帰って来た時居た?」
「いなかったな、というか今の今まで忘れてたな」
そういえば、さっきから窓のカーテンが揺れている。ほづみが、元の姿に戻って窓に近づく。いつの間にか、空いていた窓から外を見る。
「ウメコ、なんでそんなとこにいるんだ?」
ほづみが、そう声をかけるとカラスの姿のウメコさんが窓から入ってきた。
「海、必ず行きましょうね。絶対」
「いや、なんで」
「もしかして、びっくりして」
「決して違うわ断じてちがうわお化けが出てびっくりしたわけではないわええちょっとひまだったから散歩に行きたいって思っただけで驚いたとかでは決して」
「「ウメコ(さん)、大丈夫、誰にでも怖いものはある(りますよ)んだぜ」」

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