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【台湾語の特徴02】「鼻母音(びぼいん)ってどんな音?」/「鼻母音sī啥款聲音?」

これこれこれ!この「鼻母音(びぼいん)」=Nasal vowelも台湾語を象徴する一大特徴です! はて何のこっちゃい? というそこのアナタ、簡単に言うと、「鼻むろを強調させて、鼻腔からも息を出しつつ発音する音」のこと。・・・えーっと、要は、鼻からも息を思いっきり出して発音して下さい。フランス語やポルトガル語にもあります。そう聞くと何やらオシャレ~♪な気がしてきますよね? ちなみに、中国語(華語)にはこの鼻音がありません。なので、私としては、台湾語の一番の音的な特徴として、真っ先に頭に浮かぶんです。
別稿でも書きましたが、台湾人の鼻が丸いのは、絶対この鼻音を発音するために進化したんだと思うんですよねー。誰か研究して証明してくれないかしら♪ 

鼻母音、あるとなしとで大違い!


冗談はさておき、この鼻母音、あるとなしとで意味の違いが生まれます(言語学用語では、「弁別性(べんべつせい)がある」、と言います)。要するに、台湾の人にとっては、「全く別の音」として認識されているんです。だから、ちゃんと発音できないと、意味が間違って伝わっちゃうんですね。
ほら、大事、鼻母音(何やら得意げw)。
どんなふうに弁別性があるかというと…。代表的な例を、まとめて表にしてみました。じゃじゃん!:

鼻母音ミニマルペア表-14




いやー、あるわあるわ、書き出すだけで、ワクワクしちゃいます♪ しかし、どれも、こんなに意味が変わるのかよ!? とツッコみたくなりますよね。「kià(寄):送る」が「kiànn(鏡):鏡」になっちゃうなんて…もはや品詞すら合ってない! つまりは本当に、鼻にかけるかどうかは、台湾語にとって一大事なんです。


<鼻母音の表記法について>


 2006年に教育部が交付した表記法「臺灣閩南語羅馬字拼音方案」(略称:台羅/TL)では、音節末に「-nn」をつけて表します。その前に主流だった「教會羅馬字」(略称POJ)では、特殊文字の「-ⁿ」を使って表していました。でも、結構な数の人が、専用入力ソフトを立ち上げるのがめんどかったりして、プレーンの英語ローマ字で「N」って打ってたんです(語尾にしかつけないから固有名詞に間違われることはない)。

 私としては、「N」のほうが断然スマートだったし、こっちを採用してほしかったなー、今からでもここだけ改訂してくれないかなー、なんて儚い期待を抱いてるんですが、まあそれは置いときましょう!
※ちなみに「鼻母音をどう表すか」の件、台湾語研究者間では、うっかり振ると収集つかなくなるくらい、たいへん盛り上がる話題です。メモメモ。

◆そうそう、日本で有名な「ターミー(擔仔麵)」は、元々は「天秤棒で“担いで”売っていた麺」なわけで、本当は、「tànn-á-mi」というふうに鼻にかけて発音しなきゃいけないんですよー。
なお、擔仔麵をタンツーメンと読むのは論外です…それって華語だし、それにしても間違ってるし(もしあえて華語読みするならタンザイミェン)…しかし誤用が広まってゆく…ああ。。

台湾語のメニューは、台湾語で読もう!


◆ついでながら、台湾語のメニューは、もう長らくずーっと(500年以上)台湾語で読まれてきたもので、台湾語使わない世代ですら食べ物の名称は台湾語で定着してるのに、今更ながら現地の漢字をあえて華語で読み、その華語読みカタカナだけを押し通そうとする各種日本発ガイドブックのルビには怒りを覚えます…。台湾中南部本ですらそういうのが多い! なんで台湾語で読むという選択肢をしないの? せめて併記しようよ! オアチェン(ô-á-tsian/蚵仔煎)はオアチェンで通じるよ! というか、そうじゃないと変だよ!!

 …例えばだけど、アメリカ人が、高知の大皿料理「皿鉢(さわち)」を紹介する時に、「標準日本語で読むべきだ!」と言って、わざわざ「Sara-hachi」とガイドブックに表記してたら、不愉快だし、そもそも通じませんよね。それと同じです。
 最近では、あんまりツーリストが華語読みばかりするから、そっちが広まってきてる気がする…。そうやって、郷土言語が衰退する方向へうっかり加担するの、やめてほしいなあ…。
 はっ! 大いに脱線してしまいました。今回はこのへんで。私も、鼻が丸くなるくらい、鼻母音をがんばって練習してみたいと思います♪
<本稿書き下ろし>

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