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古詩三首(「自題斷魂」「放言詩」「蓮塘放詠」)

こんにちは、康寧堂です!
書き溜めていた、自詠自書作品を公開します♪

まずはこちら

「自題斷魂」自ら斷魂せるに題す。(気が塞ぐことに詩を自分で添えた)

笠谷山林中、流溪引為池。舒来微風暑、卒興泥波希。
欲行草屋下、疲坐破橋上。蒼樹欝不動、黑頭憧時盪。
笠谷、山林の中、流溪、引きて池と為す。舒に来る微風暑く、卒に興る泥波希なり。行かんと欲す草屋の下、疲れて坐す破橋の上。蒼樹、欝として動かず、黑頭、憧として時に盪ぐ。
(大意:笠間の谷の山のうち、流れをひいて池となす。微風おもむろなお暑く、池のどろ波時に立つ。
あずまやにおもむくこの身疲れはて、橋のたもとにすわるなり。
うごかざる青葉のもとのわこうどは心ぞゆれてゆるぎける。)

この詩は茨城県の笠間市という場所に遊びに行った時のものです。
この詩は五言古詩という「古詩」というスタイルで詠まれています。
「古詩」という詩は、よく学校の教科書でよく習ういわゆる
「近体詩」とは違います。

「近体詩」は大まかに分けて
「絶句」と「律詩」の二種からなり、それぞれ一句五文字の「五言」と
一句七文字の「七言」に分類されます。「五言絶句」「七言絶句」
「五言律詩」「七言律詩」という様になります。

「近体詩」は「平仄」という規則に則って作られます。
「平仄」とは、漢字にはすべて音があるわけですが、
その漢字を「平」グループと「仄」グループに大別したものです。
「平」は平らかな声調、「仄」は傾いた声調とされています。
漢字は四つの声調のグループに分けられます。
すなわち「平声(ひょうしょう)」「上声(じょうしょう)」
「去声(きょしょう)」「入声(にっしょう)」の四つです。
 
このうち
「平声(ひょうしょう)」がそのまま「平」グループをなし、
のこりの「上」「去」「入」は「仄」グループとなります。
そして漢詩では必ず韻を踏みますが、「近体詩」では韻を
踏める音は上記の「平声」に限られます。

さて、「古詩」の話に戻りましょう。「古詩」は
平仄の認知される六朝隋唐時代以前から存在する、
文字通り「古い」「詩」のスタイルです。
そのため、基本的に平仄は無視して作ります。
(個人的には平仄は意識されていなかったにせよ、
古代の人々も詩である以上、なんらかの心地よい
音の響きを求めていたことはあり得るのではないか?
と考えていますが、これといった確証はありません)
古詩も近体詩同様に押韻します。ですが、近体詩と決定的に
違うのは近体詩でいうところの「仄」グループの音もつかって
押韻するということです。

なので、上の詩でいうと、「上」字と「盪」字は
「仄」グループに属する字です。もう少し詳しく言えば、
「仄」グループ「上声」グループの韻目「二十二養」
にあてはまる字です。「じょう」「とう」母音が通じます。

近体詩では韻を踏める音は「平」グループに限られ、
さらに同じ「韻目」で踏まなければなりません。
この韻目とは同じ声調(平、上、去、入)のなかで
近い「韻」をまとめたものです。なのでたとえば
「平声」グループだとその中にさらに
「東」グループ、「冬」グループ、「江」グループ…
という様に分けられます。
そして、「近体詩」では「東」グループならそのグループ内でしか
韻を踏むことはできません。(「紅」「中」「空」などは同じ「東」グループです)しかし、「古詩」では上の「東」グループ、「冬」グループ、「江」グループ
はそれぞれ韻を通用することができます。「近体詩」では「紅」字(「東」グループ)と「松」字(「冬」グループ、)は違う韻目であるため韻を踏むことができませんでしたが、「古詩」では韻を踏むことができるというわけです。

さて、話が長くなりましたが、古詩というスタイルは音韻の規則が緩やかなため自由度が高いとも言えます。
続いての詩はこちら

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