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とんかつのこと

私はさっぱりした食べ物が好きである

自分でずっとそう思ってきたし、人からどんな食べ物が好きか聞かれたらそう答えてきた。
酢の物であるとか、大根おろしに味ぽんなんかをかけるようなああいう味わいが大好きだ。

某会社で働いていた時の話になるが
そこは割かし豪華な社食のある会社で、和洋中なんでもそろっていた。なにより、日替わりで提供される定食が毎日の楽しみであった。

とんかつ定食の日ももちろんあった。

ある日同僚に言われた。
konkoさん、とんかつ大好きですよねと。

え・・・?私さっぱりした食べ物が好きなので揚げ物はそこまで・・・
嫌いではないけど・・・と一瞬考えた。

同僚は続けてこう言った。
いつもとんかつが出るとウキウキして注文してますもんねと。

私は衝撃がはしった。

そうだ!私、とんかつが好き!
さっぱりした食べ物が好きという設定におぼれて忘れていたけど
私、とんかつが好き!
子供のころからおばあちゃんの揚げるとんかつが好きだった!
とんかつのこと、揚げ物だって気が付いていなかった!
それくらいとんかつは私のそばでいつもカラっと笑ってそばにいてくれた!
そう!私はずっとずっと、とんかつが好きだった!!

私は自分で自分の恋心に気づいていなかったというわけである。
それはすなわち、たとえて言うなら、ずっと近くにいた幼馴染への恋心に気づかないまま大人になり、ある日突然意識してしまう、、そういう状況である。

自分で自分のことってよくわかんないもんですよね、という話です。

おわり。

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