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シェイプオブウォーターの足、緑、エラ、合言葉

金曜の真夜中に、と決めていたシェイプオブウォーターを観た。

以下ネタバレ有り


金曜ロードショーのコナンを観たあとだったからなのか、「探偵がいたらこんな犯行すぐに割れて…」「警備員の彼が首の後ろに注射を受けていたことから、施設内部の人間に虚をつかれたことが分かり…」などと世界観を錯綜させてしまったりしたが、
この映画の"考察しがい"についてはミステリーを観た後でなくても思うところがあっただろう。


気になったこと①「足」「靴」へのクローズアップ


・イライザと隣人ジャイルズのタップダンス
・日課の靴磨き
・イライザが出勤前、店頭の赤いハイヒールを見つめていた
・同僚デリラが度々口にする「足が痛む」…etc.

最初、タップダンスはイライザが"声は出せないが耳は聞こえる"ことの表現なのかと思ったが、
だんだんそうではないらしいことが分かってきた。
なぜここまで足にこだわるのか?

ここで、面白い考察が見つかった。
「イライザは人魚だった」というものである。
なるほど!これには膝を打った。

首の傷跡がエラに変わるシーンについて、これはエラだったからいままで「彼」が触れても治らなかったのかなるほど〜と思っていたのだが、それだけの話ではなかった。(あとシャワールームのシーンがあったから間違いなく触れたはずだと思ってたけどそれならちゃんと触れる描写をするかも?)
人魚姫の話では、たしか、鈴のような声の代わりに脚をもらったのじゃなかったっけ。
もらいものだから、デリラの足は痛んでも、同じように働くイライザの足は痛まないのだ。


さて、イライザが毎日磨いていた靴は緑だったが、羨望の眼差しで見つめていた靴は赤かった。


気になったこと②「緑」と「赤」

この映画がかなり「緑」を推していることは寝ながら観ても分かるのだが、
これと対を成すように描かれる「赤」は何を表しているのだろうか。
(なお周知の通り緑と赤は補色の関係にある。)

映像は全体に緑がかっており、緑が大好きな私としてはそれだけでも満足なわけだが、先述のとおりこの映画は"考察しがい"があるのである。


・イライザの普段着(スーツ、カチューシャ、靴)
・イライザが通勤に使うバス
・ジャイルズ家の冷蔵庫を埋め尽くす不味いパイ
・ストリックランドの奥さんが作ったゼリー
・ストリックランドのキャデラック(正確には緑ではなくティリー)
・ストリックランドが食べている子供騙しのキャンデー

=変わらない毎日、成就のための忍耐、成功者への憧れ、フラストレーション


・店頭のハイヒール
・ストリックランドの血
・ストリックランドの奥さんの服
・イライザが途中から纏うようになりラストシーンでも身につけていたコート、ドレス、ハイヒール(今書いていて思ったがこのハイヒールは序盤に見つめていたモノ??)

=自信への憧れ、自信


おおむねこんな感じで、
ストリックランド≒赤、イライザ≒緑だったのが、だんだん反転していき、
ストリックランド≒緑、イライザ≒赤になる、というざっくりした構図があるのかなと感じた。

ここでジャイルズが描いた絵のゼリーについて、
赤を描いたら緑だと言われ、緑を描いたら時期が違うと言われるが、
赤に対してジャイルズは「ダサいけど良い」と評しており、緑の方はイライザと口喧嘩をするシーンで脇に抱えている。
ジャイルズにとっては、
緑=自分=少数派(ゲイ)、赤=普通に思い描く幸せ=羨望の対象、という構図が続いていくようで、それはちょっとスッキリしない部分かも。
(イライザだけが地上から逃げて赤になった。地上で、緑のまま幸せにはなれないの?)


気になったこと③ジャイルズはゲイなのにベティに喜ぶ

驚かないで聞いてほしいが、ジャイルズがゲイであることに最初全く気づかなかった。なんなら、最初の登場シーンではイライザの恋人かな?と思った。
パイ屋の店員に拒否されるシーンでやっとジャイルズの性的指向が分かったのだが、あれ、若くてかわいい女の人の映画に喜んでなかったっけ、この人、、?と思い出し、そういえば何やら意味深なことを言っていた。
「何も考えずにすんだ18歳の頃に戻りたい」
……その頃自分の性的指向に気づき、ベティのことはそれより前から好きだった、ということなのだろうか。でも性的指向ってそんな、時期によって区分けできるようなものなの…?


気になったこと④「(彼には声というものに先入観がないからこそ)ありのままの私を見ていた」という"セリフ"

これをセリフにしてしまうというあまりにも直接的なやり方は正直言って興醒めだったが、声が出せない彼女が親友のジャイルズの声を通して発したセリフである、というある種の免罪符によって昇華されているのかもしれない。

声なきものにこそ声がある…というか。
メタ的なことを言ってしまえば、いかに説明的なセリフなしで描くかという映像の世界において、声の出せない王女さまは手話という特権を持つ。

気になったこと⑤なぜ「彼」は猫を食べた後ジャイルズまでも傷つけたのか

「彼」に再生能力があることを描くのに必要だったのかもしれないが、それは髪のことだけでも事足りたはずだ。
ジャイルズの傷は治り、イライザの傷は治らなかった。
このことから言えるのは、
・イライザの傷はただの傷ではなくエラだった
ということ、
そしてこれは少し妄想的なのだが、
「彼」はジャイルズがエラを持つか確かめようとした

そんな知能高くは描かれていないのが「彼」だが、本能で仲間を探していて引っ掻いた、みたいな。。どうでしょうか。(急に)


気になったこと⑥プロローグの家にかかっていた表札


全部見てからプロローグを見たら、あの屋根裏みたいな最高すぎる家が海の底にあってその対比もなんだか美しいのだが、
そこに表札がかかっているのが気になった。
何が書いてあったのか読めなかったので、何か知っていることがあれば教えてくれ。何も見てません?どんなささいなことでもいいんだ。
どんなささいなことでも…ですか?
F・*・C・K Y・O・U
ええっ!?やめときな!!??



最後に、好きだったところもいくつか書いて終わろう。

好きポイント①最高の家

イライザとジャイルズの部屋の窓が対になっていることが片方を見ただけで分かる、その半円形

小さい映画館の上なのが良い 職住一体…ではないか 住宅街もそれはそれで愛せるのだが、商業地域の店上の借家すみてえ〜〜〜!!チョコレート工場が燃えてカカオの匂いが〜〜!!(乱心)

好きポイント② 合言葉が全然聞こえない

聞こえないのも伏線といえば伏線なのだが、博士がかわいすぎたねえ(ディミトリ、偽名が長くて思い出せない)

スズメが…!とか花の…!とか言ってなかった?合言葉かわいいな?

マイケル・スタールバーグ 好きかあ

好きポイント③キャデラック店員

ストリックランド「見てるだけだ」、に「私は話すだけ」
これ使える…!と思った、使う機会ないけど

ここと、ラストのポエムが思わず巻き戻したシーンでした。

まとめ

映画ってこうだよなー!!と思わされるような、映像のすべてに意味がある感じが、考察廚(を名乗れるほどではないが)の心を刺激する見応えある映画でした。



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