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140字小説④

Twitterにあげている作品のまとめです。今回は13作品。読んで頂けるだけで幸せ者です。


43.突然

突然の雨で雨宿り。夏の下校時にはよくあることだ。いつもと違うのはあなたが隣に来た事。ドキドキが止まらない。私の内情を知らないままあなたは告げる。

「はやく止まねぇかな」

残酷だ。

感情のジェットコースターの後に出た言葉は

「降り続ければ良いのに」

「えっ、どういうこと」

傷付く覚悟は出来ている。

44.道端に咲く花

全ての道が塞がった。死のうと思った。こんなはずじゃなかった。悔しくて涙が落ちる。その涙が道端の草に潤いを与え命を繋ぐ。草は生きる為に落ちている物でも食べた。鋭い棘は人を寄せ付けない。そして一輪の花を咲かせる。ちょうどその頃僕は新たな道を踏み出していた。道端の花には見向きもせずに。

45.うさぎと私

うさぎの耳をつけた貴方を追いかけて怪我をした。いつだって貴方はそばにいた。いつだって私はそばにいた。会えなくなっても幸せは続く。貴方の痛みは私の痛み。私の痛みは貴方の痛み。どんな道を選んでも未来は明るいと確信する。貴方の喜びは私の喜び。私の喜びは貴方の喜び。その瞬間は永遠だから。

46.想いを薄める

濃い想いを伝えてしまった。菜の花の咲く季節から朝顔の綺麗な朝まで煮出したような。もはや甘みは無く苦味とエグミを含んでドス黒い。困惑させて当然だ。薄めなきゃいけない。それはただひたすらに沈黙をすること。あなたの幸せだけを願って。一面に爽やかな風が吹くまで。想いが透明に近づくまで。

47.手紙

驚いた。届いた手紙の中身は10枚を超えていた。「誤解なく伝えることなんて無理なんじゃない?言葉には限界があるよ」あなた自身がそう言っていた事を思い出した。これはその限界に近づけようとしたのだと思う。私は返信の手紙を書く。ひたすらに書く。溢れ出る文章を。私だってその限界に挑みたい。

48.信じた道

新卒で入った会社を辞めた。就活の苦労は何だったのだろうかと思う程あっけないものだった。経営者に嫌味なことも言われたが気にしていない。母はどんなときも期待と不安を握りしめて自分の信じた道を行きなさいと言ってくれた。人生は有限だ。私は歩みを止めない。ワクワクを右手にドキドキを左手に。

49.優しいあの娘

礼儀正しく相手のことばかり考える優しいあの娘。でも自分については悪いことしか信じられないみたい。僕は会う度に「好き」を伝えた。そのまま4年、今でもあの娘は「陳腐化した好きは終わりのシグナル」なんて言う。姫カットの似合うあの娘は大きく間違えてる。だけど僕は絶対にあの娘を否定しない。

50.すみれの咲く朝に

起きた瞬間に思い出した。昨日別れたんだった。「そんなこと知らないよ」と言わんばかりに窓の外では春風が花を揺らす。そうだ今日から私は自由の身。一人分のコーヒーを淹れてTVをつける。泣き止んだら水やりして好きな美術展に行こうかな。留学に行くというあなたを応援してる。私の心は晴れている。

51.身分違いのすれ違い

「タクシーにしよっ」て言っただけで傷つけるとは思わなかった。「僕とは住む世界が違う」なんて悲劇ぶらないでよ。私はあなたの経済状況なんてどうだって良い。あなたに合わせられる。私はあなたのキラキラした目について行きたかっただけ。どうしたら輝きが戻るの?資産を捨てれば良いの?平気だよ。

52.彼である証明

容姿を失っても好きでいる自信があった。交通事故で容姿も内面も大部分を失った彼。私の事もわからない、言動も違う。彼が彼である事を見出すのが難しい、流石に私がしんどい。でも病室で彼が花を愛でる姿を見たとき私は彼を失う事が出来ない現実に涙した。彼が彼である証明はもうそれしか無いんだ。

53.降る雪のように

終わりが来るなんて嫌だと言いながら終わる予感がしていた。冬の夜は静か過ぎる。未来が途切れるのが嫌で将来の話ばかりしていた。「そうやって聴かれても本当になりたいものが無いんだよ。屋根があってご飯がある生活に満足しちゃって」それなら僕は居ても居なくても同じだ。目の前に降る雪と同じだ。

54.孤独の夜

夜空に浮かぶ飛行機には沢山の想いが乗っていて、ネットの海には散り散りになった感情があって。此処で煙草を吸ってはあなたへの気持ちを膨らます。夜中の街には音がなく、一人でいると崇高なのかと勘違いするけれど明日の朝には低俗な意識で会社に向かう。崇高と低俗の間。孤独。そんな夜が今日の夜。

55.翼よ私に

転職初日。学生時代に“リンドバーグ”と名付けた灰色のスクーターに乗って会社まで来た。新卒で入った会社は良くも悪くも学生気分を粉々にしてくれた。帰りの電車で何度も泣いた。悲しみの夜はもう越えた。翼よ私に勇気を下さい。飛行家とロックバンド、偉大な先人の想いを胸に私はゆっくりと歩きだす。

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