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140字小説②

Twitterに投稿してる #140字小説 のまとめ(一部修正しています)今回は16作品。投稿し始めて約1年で合計25作品とは我ながらマイペースだねぇ…。僕の生み出した文章を是非是非楽しんでいって下さいな。


10.憧れ

「私、このアイドルの見た目、生き方、思想が大好きなんだ」

Twitterを見せながらそう言っていた彼女。結局は上手くいかなくなった。終わり方は普通の男女と何も変わらない。苦しみも同じだ。何か意味があって欲しい。画像ツイートにイイネを押す。素敵な人だと思うから。

それだけが出会った証。

11.記憶に残る姿

「この器はねトンスイって言うんだよ」ああ、思い出してしまった。

この話をする度に教えてくれた人を思い出す。とてつもなく素行の悪い人だったけど憎めない。

「ビールは麦畑を想像するから美しい。お酒が美味しいのは昼だけ」とか。

最後は突然姿を消した。

それがあの人の優しさだったとしか思えない。

12.デートの約束

ハッピーエンドが好きと言ったあなたの為に話を書きたい。だけど書いては消して筆が進まない。電話に手が伸びる「ねぇ、どうしても書けないんだけど…」

自分の重苦しい口調が嫌になる。

「そんなことどうでも良いから来週末、水族館行こうよ」

え、初めて向こうから誘ってくれた。ハッピーエンド

13.会いたい人

二度と会うことが無いかもしれない。その人といつものバーで再会をした。いつも一緒にいるみたいに話は盛り上がり楽しい時間を過ごした。それでも互いに連絡先も近況も聞かない。「またね」と言って別れるときも「またね」以上の感情は無い。二度と会うことが無いかもしれない。そんな関係も愛おしい。

14.見えないもの

深夜の海辺、お酒も入って友達4人が全力ではしゃぐ。

宴の最後はやっぱり線香花火。

それが当たり前のような沈黙。

それぞれ別の光景を見てるんだろうね。

私には花火と無関係のあのときの光景が鮮明に蘇る。どうしてあんなことを言ったのだろう。

どうすれば良かったんだろうね。

涙を追って火玉がポトリ。

15.記憶と共にある感情

この物語には人だけじゃなく景色、音、香り、感触、感情も登場する。

生物には感触があり、景色には香りがある。音には憧憬、人には言葉があってどんなものにも感情が。

僕の物語はあなたの物語では無いけども何故かいつも居る。

あなたはいつも感情を伴う。

あなたの物語に僕はいますか?

16.最後の夏休み

「また絶対に会おうな」
「うん絶対にねー」

家族旅行で海沿いの民宿に一週間お世話になった。予想外に夢のような時間が過ぎた。

その絶対は絶対とは言えないとわかっていた。それでも言う。嘘ではなく希望なんだ。未来は決まってない。

何だか大人になった気がした。夏の終わりに。

17.あなたは特別

「めんどくさがり屋」だと言ってるの伝わってないんだろうか。弁当よりも丼の方が好きって程のめんどくさがりなんだよ。お風呂に入らない日もあるし、洗濯物はいつも干したまま着る。

時計を見たら22時半。

「めんどくさいなぁ」

と言いながら車のキーをポケットに入れる。姿見に映る顔がにやけていた。

18.三日月おめめ

月見バーガーが大好きだったあの人はもう居ない。

目の前の月見バーガーが美味しく感じられない。

八重歯の光る笑顔が素敵だった。

恥ずかしそうに歌う唄が素敵だった。

頻繁に口にする嫌味や悪口も嫌いじゃなかった。

いつも側にいてくれたような安心感があった。

きっと僕はもう全力で笑うことが出来ない。

19.一緒

絵本とカレンダーのキリンさんを見比べて「一緒や」と言って笑う。“一緒”という言葉を覚えたらしい。次はお母さんとお父さんを見比べて「一緒」と言う。「お母さんとお父さんは違うよ」と言っても「うううん、一緒」と。

娘には何が見えてるのかな。今日の夜は冷えるけど、三人を包む空気はとても暖かい。

20.伝える気持ち

卒業式終わりで浮かれてる人達。離れた所で浮かない表情の彼。突然走り出し一人の女性の前に立つ。

「え、何?」

「もう二度と会えないなんて嫌だ。これで終わりなんて絶対に嫌だ」

そのまま伝えるんだ。驚いた。

「えーと、とりあえず連絡先だけ教えておくね」

ここから始まるストーリーはまたの機会に。

21.恋の余韻

冬の始まり。前の恋が始まったのも終わったのもこの匂いだった。始まったのは曖昧だけど世界に色がついたようだった。終わりは鮮明だ。『好きでいなきゃいけないは終わりの合図』お互いに理解してしまった。新たな恋には慎重になる。でも世界はまだ色付いている。心は止められない。この匂いも同じだ。

22.残された時間

モルヒネが効いているのか父は上機嫌だった

「よう来てくれたなぁ、仕事忙しいやろからはよ帰りや」

ブカブカになったパジャマ。異様に柔らかい口調。よく知った父とは違う。父親であることから開放されたように見えた。

この日の帰り道、母の泣く姿を初めて見た。

僕の方は自室に入った途端涙が溢れ出た。

23.ゴミ箱バスケ

机に向かったのに携帯ばかり見る。幸せの余韻って薄れていくんだね。会ってから三日目までは平気だったのに四日目の今日はもう会いたい。

「いつでも誘って」の言葉が頭をよぎる。社交辞令か?ダメだ課題が全く進まない。

レポートを丸めゴミ箱に構える。

入ったら今誘うと決めた。

外れたら来週誘う。

24.健康だけで

上京して14年目、実家に戻るのを決めた。

落選の通知に落ち込むこともなくなった。周りの目は冷たい。もう限界だ。

心残りは唯一応援してくれていた母のことだけ。申し訳ない。

それでも私には健康がある。此処からやり直すんだ。

母の居なくなった部屋に入った時「ええんやで」って声が聞こえた気がした。

25.物語の結末

都会がどれだけ楽しい所か興奮気味に話すあなた。

「オリオン座がうっすらとしか見えないなんて悲しいことだね」と返す私にはもっと悲しい未来が見えている。

あなたは口調が変わり、私はメイクが変わった。

来月会う約束は守るつもりでいるよ。お互いの心が同時に離れていくことなんてあるんだね。

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