短編にも満たない物語

ひばりが鳴いた

ひばりの声はよく響く 
その声は私の頭の中で今でも余韻となり、響いている

それがひばりの声だと知ったのは、
たまたまつけたテレビでだった。

あの声をはじめて聞いたのは、大学の学食でだった
美しいと思った
笑うようによく鳴く鳥だと思った

幾日か経ち、私はその鳥を目で探していることに気が付いた
ひばりが鳴くと安心し
ひばりが鳴いていないとどうしたことかと、心配した

きっと声をかければ、飛んでいく
だから私はそっとしておいた

ある日、ひばりは私のそばで鳴いた
ベンチで座って本を開いていると、
手すりに小さな足を乗せ
可愛らしい声で鳴いた
なんと鳴いたか私にはわからなかった
ただいつも見ていた鳥が
私のとなりで鳴いていることに胸が高鳴りすぎていた
なんと言えばいいのか、
美しさで声をふさがれることがあるのかと当時は思った

ひばりは鳴くだけないて何処かへ行った
行先を告げたかどうかも私は覚えていない

ただその時のひばりの声が
今でも余韻となり私の胸を躍らす

もう、3年の月日が経った
ふと、ひばりという鳥は何年生きるのだろうと疑問に思い、
仕事を早めに切り上げ、市立図書館へ向かった

電車で一駅
改札を抜け、図書館の位置を確かめた
少し歩かねばならなかった

あの時のひばりは元気にしているだろうか
今でも笑うように鳴いているだろうか

自然の音を聴きながらゆっくりと歩いた
そよぐ風に乗ってどこからか揚げ物の匂いがした
先ほど乗っていた電車が 私の背中で通り過ぎる音がした
その時ふと、目の前の木陰でひばりの声が聞こえた気がした

ひばりはもういない
ひばりは高く飛ぶそうだ
どこまでも高く高く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?