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【言霊ピンポン】第12週

No.75:sideH 「偸盗」

芥川龍之介の小説に、平安時代の盗賊を描いた『偸盗(ちゅうとう)』がある。これは今昔物語の美女盗賊のエピソードを下地にしているらしい。 伝説の美女盗賊としては鈴鹿姫や紅葉姫など「捕まえてみたら、うら若い美女だった」というのは、昔からスキャンダラスなテーマなんだろう。山に隠れ棲む鬼女や女盗賊は、朝廷に恨みを持つ一族の末裔だったりして、物語上は最終的に帝にひれ伏す…そのキャラを美女に設定するところが、日本の根深い、いやらしさを感じてしまうのだ。


No.76:sideM 「怪盗というロマン」

子供の頃から「怪盗」に弱い。原点である怪盗紳士アルセーヌ・ルパン、そこから派生した「ルパン三世」。なんでこんなにわくわくするのだろう。泥棒、犯罪者なのに。それはやはり彼らが文字通り『怪しく盗む』からでは?常人なら手を出そうと考えすらしない難攻不落のターゲットをあらゆる趣向を凝らし盗み出す。武力ではなく知力を尽くして。義賊と違って、純粋な自分の楽しみのために。フィクションだからこその自由さ奔放さがどこまでも私たちを魅了するのだろう。


No.77:sideH「夕顔」

源氏物語の夕顔の巻が好きで、偏愛している。源氏の君が見つけた彼女・夕顔は想定した以上の素晴らしい女性だった。源氏は夕顔にはまりこむ……が、しかし。その夕顔は、生霊に取り殺されてしまう。その生霊とは源氏の別の恋人だった。この物語のすごいところは、源氏の君の立ち直りの早さだ。愛した人が、自分の恋人の生霊に殺された(目の前で)のに、彼はうつにもならず、「起きてしまったことはしかたがない。さ、次に行こ!」となる。この精神こそ、難攻不落の城塞なんじゃないかと思える。


No.78:sideM「自己愛」

他人を自分の思うままにしたいという欲望、いわゆる支配欲を持つ人々。巷の事件を見ていると結構な数いるようだが、不思議でしょうがない。そんなことできるわけないじゃん、とそこそこ長生きしていればわかりそうなものなのに。と思っていたのだけど、以前こんな文言を見かけて腑に落ちた。自己愛の強い人間は、他人を自分の手足のように思っている。だから自分の意のままにならないとイラつき癇癪を起こすのだ、と。そりゃあ自分の手が反抗して来たらパニクるよね(笑)。


**No.79:sideH 「手長足長」 **

手の長い弟と、足の長い兄貴の巨人の伝説は、日本各地にある。兄弟じゃなくて夫婦だったりもする。テナヅチ、アシナヅチという巨人夫婦の娘はクシナダヒメといって、スサノオ神に見初められて妻になる。神話に多いのは、神(男)が、人間の娘を妻に娶るというもの。でもこのクシナダヒメの話は、巨人の娘を神が娶るというちょっとおもしろい形をとっている。異類婚姻譚というにもちょっと異質で、神聖度がちょっと高い気がするのだ。


No.80:sideM「異形の愛」

里見八犬伝の伏姫と八房とか、村娘が龍神の花嫁になるとか、人間と異形がパートナーになる類の逸話、いわゆる異類婚姻譚。現実でも、海外では猫と結婚した人がいるとか。個人的に美女と野獣も最後野獣のままでいいのに派なので、むしろアリよりのアリ。意思の疎通のできない人間同士より、むしろ豊かな関係性を築けるのでは?人類という種に絶望しそうな昨今、そんな風に思ってしまう。


取材、執筆のためにつかわせていただきます。