窓際のおっさん16 公務員志望者減_技官は定員割れ続出 (4/4)専門職の意見を聞かない上役、古い時代の嫌な公務員

 前回は、専門性を理解しない、活用できない役所の状況と、それによって起こったお粗末な施工や、死亡事故の発生という悲劇について紹介した。
 最終回の今回は、その続きとして、専門職側からの意見すら聞き入れようとしない上役も存在した実例、そして少し強引だが、そうした状況の根幹に見え隠れすると思われる、古い時代の嫌な公務員の価値観が、現在も燻っていることをお伝えしたい。

<前回の続き。。。技術系職員側からの専門性を発揮しても拒否される>


 実は前回の①、②、④は、おっさんが、設計の段階で事前に「これは直さないとだめですよ」と指摘した案件でもある。
 ところが上は言い訳ばかりでどれも変更しようとしなかった。プライドなのだろうか。どれも絶対直すべき点であり、このままだと本当にまずいのだが、一体何をそんなに守りたいのだろうか。

しかも
「このサーバ室は来年はコンゾー君が担当になるんだからね、しっかり協力して」
 
などと調子のいいことを言っておきながら、次期担当者、そして専門家の立場として真っ当な意見を口にすれば、途端に眉をひそめるのである。
 
以下にその後の顛末を記す

① 自動火災報知器の設置不足について
 提案拒否の理由を聞くと「お金がない」である。おっさんがいくら不足か?ちゃんとやれば一万円もしないぞと言ったが、それでも「足らない」の一点張りで、残額は断固として明かさなかった。

② コンピューターサーバー冷却用の冷房の不設置
 既存空調を移設予定だったのだが、なぜか施工時には、部屋仕切りの上部を開放にし、隣室からの冷気で対応していた。理由はまたお金だったが。。。移設をやめたのになぜお金が減るのだろうか?バレバレの言い訳であった。
 後の酷暑でサーバーがどうなったかは知らないが、守るべきは偽りの予算の話ではなく、100万人都市内全域の水道管データベースである。こんなんで非常時にサーバーが動かなくなったら許される筈もない。

④ 無用な新システム導入と、サーバ通信経路の冗長性、拡張性の低下対策不足
 システムは「課長の肝入り」だと説明されたが、課長は何もわかっておらず妙な期待だけ語っていた。そしてそこはいくら話をしても平行線だった。
 通信経路についても誰も技術や理論を理解しておらず、苦し紛れに「勝手に変えると使っている人が困る」などと説明されたが、おっさんの方がかえって解釈に困ってしまった。

 どれも酷いが、ことごとく全部の進言を蹴って許されるならば、役所は一生技術職なしでやってくれと言いたくなる。人死にや大規模障害が出るような問題もあるのだが、こちらが技術者としての使命感をいくら燃やしても全く受け付けないのでは、どうしようもない。

 他にもこうした事例には枚挙にいとまがないが、またの機会に少しづつお話ししたい。

 ともあれ、技術者として、事の初めから何もかも間違っている場所に関わるように言われ、間違っている旨意見を述べても全否定、爆弾を抱えたまま次年度から担当者をやれと言われては頭がおかしくなる。

 本件の後もいくつもの暴論が重なり、尚も抵抗し続けたが、終いには「何もするな」と言われ、こちらも疲れ果ててしまい、この時おっさん、初めて心を病んで休職してしまった。

<未だに会話から耳に入ってくる古い時代の嫌な公務員>


 これまで紹介したように、旧態依然としたやり方や上下関係が、今なお強く肯定され続けている世界が、役所の特徴かもしれない。それは日常的な上の世代のちょっとした会話や意見の中にも滲み出ている。例えば、去っていく部下後輩などに彼らがかけた言葉で、印象深かったものを紹介する。

途中で辞めて転職を決めた職員に対して
「彼は結局役所しか経験がない人でしょ? 俺が社長だったら雇わないね。」

技術系公務員を増やすにはどうしたら良いと思ってますかに対して
「ものづくりと社会奉仕の尊さをうったえつづけるしかないでしょ?」

退職時の面談で、
「辞めたら今後はウチに頭下げるんだよ?いいの?」

どれもうんざりするような考え方である。

 若干無理矢理なまとめになるかも知れないが、変わらないのも、モラルが低いのも、間違った上司を上司というだけで肯定し、専門職をまるでいないかのように扱った挙句、最後は無為に犠牲にするのも、全部こうした古くて傲慢な価値観が根っこにあるように思う。

 これらのセリフや、全4回の事例に述べたような誤った対応、価値観を、恥ずかしい、気持ち悪いと認識できる人が増えない限り、公務員の、特に技術系職員の人気はおそらく今後も下がり続けるだろうとおっさんは思う。

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