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ブラジルの危険なアボカド。

ホステルの部屋へ戻る道、踏み出した左かかとのすぐ横にでっかいアボカドが落ちて砕け散った。

ブラジルのアボカドはちょっとしたメロンくらいでかい。ニュースにならないだけで年間に数人はアボカドが脳天に直撃して命を落としている。きっと。

サメも熊も避けてばったり死と遭遇しないように生きてきたのに、アボカドに殺されかけるなんて。努力の甲斐もあったもんじゃない。

サオパウロのホステルで出会った旅人は黄熱病もマラリアも知らずこれまで長いこと旅してきて、まさかのボリビアで刺された小さな小さな虫にウイルスを打ち込まれ体の機能を侵されて死にかけた。毎日8時間を3か月、病院のベッドでポルトガル語の勉強をしながら点滴をうけている。ネットフリックスのドキュメンタリーにやたら詳しくなった。これによく似た体験をメルボルンでした人を知っている。

ブラジルは危ないぞとさんざん聞かされてきた。来てみれば何のことはない。取りざたされて危険だということはない。自ら怪しい事業にかかわったりしなければ、スリが多いというくらい。日が暮れて窓から外を見れば、お向かいの家々はみなカーテンも閉めずに夕涼みを楽しんでいる。噂ってホント、当てにならないもの。

昨今の予防接種はお歳暮カタログに負けないほどのオプションで、旅に出る前「これを受けろ」「あれは受けといたほうがいい」とさんざん言われて、「製薬会社の陰謀だろーどうせー」と高を括りつつ、でもやっぱり怖くなって必要最小限と言われるものは打ってきた。黄熱病と破傷風と、A型肝炎か。マラリアのタブレットもお薬袋に待機している。

足元に散らばったアボカド。

「ああ、今日もまた無事に楽しく過ごしてなんとありがたや」

自然が迎えに来るのならそれは仕方のないこと。戦争や暴力でなく自然に死ねることってけっこう幸せなことだと私は思う。

とはいえやっぱりサメに食べられるのは嫌だなあ。


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