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答えは風に舞っている

【過去の投稿です】


●湯浅学著『ボブ・ディラン~ロックの精霊』から。ディラン登場時のフォーク・ソング界は、政治や社会問題を批判する「トピカル・ソング」が主流だった。「風に吹かれて」は、世事を超え、人間の普遍的命題を歌った曲だ。そこが当時としては新しい。新しい故に誤解もされやすかった。

●「いくつ耳を持てば、民の嘆きは聞こえるのか?」「何人死ねば、あまりに多くの人が死にすぎたとわかるのか?」等と問いかけを重ね、「その答えは、友よ、風に舞っている」と結ぶ。湯浅さんによれば、この曲は世相を糾弾しているのではなく、人間のやるせなさの基盤である虚無的感情を描いたもの。この歌の何故に対して、答えを安直に出そうとする人間をこそ信じてはいけない。問い続けることが必要なのだ。

●それらを踏まえて私が思う「風の中の答え」とは。風は身近にありながら実体がない。“感じ取る”ものだ。他人の意見を鵜呑みにせず、自分自身の、自然な考えで真実に近付け、と教わっているのではないだろうか。本書はまだ途中までしか読んでいない(『セルフ・ポートレイト』がリリースされる直前)が、ここまで読み取ったディランの生き方自体と見事に重なる。やはり、哲学は、人それぞれの生き様に準じて創り上げられるものだ。だからこそ、人々の生き方の共通項ともなるのだ。

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