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東京マラソンの結果と代表争い途中経過。

皆さんこんにちは。今年の東京マラソンも(先頭集団のコース誘導間違いはあったものの、大きなトラブルでは無いという事で)無事に?幕を下ろしました。ひとまず安心している筆者です。さて、2年ぶりの開催、3年ぶりに市民ランナーが参加して行われた今大会、以下の記録が生まれました。

☆E.キプチョゲ、B.コスゲイともに大会記録を更新して東京マラソン初優勝

☆鈴木健吾、一山麻緒夫妻ともに日本勢トップとなり、同一大会の合計タイム(4時間26分30秒)ギネス記録を更新

☆MGCファイナリストへ新たに男子8人、女子3人追加

それぞれ、感想をひとつずつ述べていきます。

やはり強かった海外勢

序盤から差を見せつけました。風と日差しが気になるコンディション、男子は鈴木健吾選手ら日本勢が1km2分58秒(5km通過は14分49秒)程度の第2集団で進む一方で、E.キプチョゲ、A.キプルト、T.トラ選手ら先頭集団は1km2分51〜52秒(5km通過は14分17秒)ペースでも涼しい顔。女子は一山麻緒、新谷仁美選手らの第2集団が1km3分15〜16秒(5km通過16分18秒)の速いペースで入りました。が、B.コスゲイ、A.ベケレ選手ら先頭集団はそれをも上回る1km3分13秒(5km16分05秒)の入り。レース序盤から、これぞ海外招待、世界の強豪だという威厳を見せました。
中間点通過は男子先頭集団が1時間01分03秒、女子が1時間08分06秒、第2集団は男子が1時間02分33秒、女子が1時間09分29秒で通過。男子中間点の通過はキプチョゲ選手史上2番目に速かったようです(最速は2018年Londonの1時間01分00秒)。難しい事を涼しい顔でこなす、アスリートを超えた仕事人の域ですね。
35km過ぎ、ずっと集団で競り合っていたE.キプチョゲ、A.キプルトの男子先頭でしたがキプチョゲが一気に飛び出しました。勝負勘、飛び出し、見事なタイミング。一瞬の見極めが連戦連勝の鍵なのかもしれません。そのままゴールまで突っ走り、見事2時間02分40秒の3rdベストで優勝を飾りました。

(非公認大会2戦も含む)

これでキプチョゲ選手はフルマラソン16戦14勝、ワールドマラソンメジャーズも6大会中4大会目の制覇となりました。「勝ち方を知っている」というフレーズはスポーツ界で聞くのですが、フルマラソンで勝ち方を再現できるのは素晴らしいです。2位のキプルト選手も自己ベスト・世界歴代9位となる2時間03分13秒でゴールしました。世界レベルの競り合い、見ごたえありました。素晴らしかったです。

(初マラソンから3戦のラップが不明です汗)

女子先頭集団は1km3分12〜14秒ペースのままB.コスゲイ、A.ベケレ、G.ゲブレシラシエ3選手が競る展開。35km地点を過ぎB.コスゲイ選手が更にペースを上げ飛び出しました。35km-40kmは15分48秒と、終盤に5km15分台へギアを引き上げる走り。持っているものが違いました。そのままゴールで飛び込み2時間16分02秒の2ndベストで東京大会を制しました。実は女子マラソン史上、2:16台を記録した初の選手になりました。コスゲイ選手は2020年London以来のフルマラソン(15戦中)9勝目です。男女とも世界記録保持者が異次元の走りを東京で発揮しました。

日本最強のフルマラソン夫妻

先頭集団から大きく離された第2集団は25kmを過ぎ、縛られつつあったグループから鈴木健吾選手が飛び出しました。勝負を見据えたスパートを見せ25-30kmで14分38秒を記録しました。この積極的さが持ち味でもあります。これに対応した吉田祐也、井上大仁、林奎介選手でしたが長くは持たず。特に、吉田祐也選手にはフルマラソン3走目で初めて壁が立ちはだかりました(総合2時間9分20秒の24位、35km以降24分47秒と失速)。そういった壁を乗り越えた者にしか見えない世界と言いますか、違う世界が見えるのかもしれません。鈴木健吾選手がインタビュー冒頭で流した涙は、日本記録保持者という重荷と、結果を常に残さないとならないプレッシャーがあったのかもしれませんね。万全では無いながら2度目の2時間06分切り、強いレースでした。
一山麻緒選手も東京五輪代表を1年半の間背負い続け、五輪本戦では8位に入ったものの、その後はロードレースで結果が振るわず(クイーンズ駅伝や都道府県駅伝共に区間2桁)。東京マラソン本戦でも早々に先頭集団から引き離され、日本記録ペースからも徐々に遅れていく、新谷仁美選手と競り合いも引き離せず。それでも35キロ過ぎに引き離したのは流石の走りでした。ラスト2.195kmは優勝したコスゲイ選手に次ぐ7分35秒で走破しました。結果夫婦ともに2ndベスト(2時間05分28秒&2時間21分02秒)、いずれも東京マラソン日本勢最高記録のパフォーマンスを残す辺り、本来の状態では無かったかもしれませんが一流の意地を見ました。
鈴木健吾選手と一山麻緒選手の合計タイム4時間26分30秒は同一大会の合計タイム日本最速はおろか世界最速となり、ギネス記録を更新したそうです。勝負に決した2人への褒美と言うんでしょうか。これからも速さと強さを兼ね揃えた夫婦として君臨して欲しいです。

MGCファイナリスト

男子上位。総合22位までが2時間09分切りを達成。
女子上位。13位までが2時間30分切り。

今大会も次々と好記録が誕生し、男子はもはやサブテンを達成した程度ではさほど驚かれなくなってきました。女子も19年ぶりに1大会で2人の2時間21分台が生まれ、男女両方でハイレベルな日本代表争いになりつつあります。
MGCファイナリストには男子8人、女子3人が加わりました。男子は鈴木健吾、湯澤舜、其田健也、聞谷賢人、土方英和、佐藤悠基、2大会平均2時間10分を切った定方俊樹と田口雅也も追加されました。女子は一山麻緒、新谷仁美選手に初マラソンの森田香織選手がファイナリスト入りを果たしました。

世界選手権日本代表争い

男子

男子の選考レースは全て終わりました。ここでオレゴン世界選手権の選考条件を振り返ります。なお選考条件⑶は男女とも⑵を3人以上満たしているので記載してません

(1)JMCシリーズIのチャンピオン(第105回日本選手権者)
ただし、対象者が辞退した場合は、JMCシリーズIのランキング上位者から1名選考。
(2)各選考競技会において派遣設定記録を満たした日本人2位以内であった競技者の中から各選考競技会での記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された競技者。ただし、選考基準(1)で選考された選手が2位以内に入った場合は、その選考競技会については、日本人3位までを対象とする。

https://www.jaaf.or.jp/files/upload/202107/02_105245.pdf

⑴に関しては鈴木健吾選手がJMCポイント1位をほぼ確定させたので総合順位が確定し次第代表内定となります

⑵派遣設定記録2時間07分53秒を上回った日本勢2位以内に該当するのは

西山雄介(2時間07分47秒・別府大分優勝)
星岳(2時間07分31秒・大阪優勝)
山下一貴(2時間07分42秒・大阪2位)
湯澤舜(2時間07分23秒・東京7位)
其田健也(2時間07分31秒・東京8位)

の5選手です。順当なら選考会優勝の星岳、西山雄介選手が選ばれそうですが、どちらも初マラソンで負担の少ない状況で出した結果と捉えられた場合、タイムが最も良い湯澤舜選手にスポットが当たる可能性もあります。どうなるでしょうか

女子

女子の選考レースは今週末の名古屋ウィメンズマラソンを残すのみとなりました。

現在の選考状況について男子に準えて振り返ります
⑴現在のJMCポイント1位は東京で日本勢1位に入った一山麻緒選手(2584points)。2位は松田瑞生選手(2578points)、3位は上杉真穂選手(2477points)です。

⑵派遣設定2時間23分18秒を上回った日本勢2位以内に現在該当するのは

松田瑞生(2時間20分52秒・大阪国際優勝)
上杉真穂(2時間22分29秒・大阪国際2位)
一山麻緒(2時間21分02秒・東京6位)
新谷仁美(2時間21分17秒・東京7位)

の4選手です。なお一山選手のJMCポイント1位が確定した場合でも⑵を満たす選手が3人以上発生するのは変わりません。個人的には、松田選手、一山選手の日本代表入りはほぼ確実と思っています。新谷選手の「トラックで代表を狙う」発言がどこまで本当なのか定かでは無いですが、現時点では、大阪国際2位の上杉真穂選手が出した2時間22分29秒がターゲットタイムになると見ています。国内招待は安藤友香、川内理江、田中華絵、和久未来、細田あいの5選手です。海外招待は強敵(世界歴代4位・東京五輪銀L.チェプンゲティッチ、世界歴代8位・前東京マラソン記録保持者L.サルピーター、東京五輪10位ダイバー)ですが、積極的にチャレンジし上杉選手を上回って最低でも日本勢トップに入るのが理想的でしょう。男子と同様、初マラソンから一気に記録を狙うのも悪くありません。戦力底上げのために是非高い壁に挑んでもらいたいです

最後に

東京マラソン、歴代の試合でも屈指の、見応えがあるレースでした。若手・中堅・ベテランが入り乱れる日本のマラソン界、今後どこまで海外勢に食い下がれるか楽しみです。選手達も実感している通りまだまだ世界との差は大きいですが情勢が落ち着いたら、海外遠征等で積極的に勝負してもらいたいです。そして、世界大会やMGC筆頭に、万全な体調で臨める事を祈ってます。今週末は女子の世界選手権最終選考レース名古屋ウィメンズマラソンが開催されます。こちらも久々の海外招待を交えて熾烈なレースが展開されそうです。

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