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読書

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記事一覧

会社はこれからどうなるのか

会社には2つの対照的な統治手法があると言われています。 それは、株主中心か、企業中心か、ということです。前者はエージェンシー理論、後者は企業主体論と呼ばれます。取締役・経営陣の役割は、それぞれ異なってきます。それぞれ特徴がありますが、時代によって語られる優劣に変化があるようです。 取締役・経営陣の端くれでもある自分にとっては、当事者として非常に関心が高い議論です。 株主中心のエージェンシー理論エージェンシー理論では、取締役・経営陣は株主の代理人(エージェント)であるとい

2022年上半期に読んで心に残った書籍5選

少し前の話になりますが、週に3回本を紹介する朝会をしていたぐらい、本を読むのが好きです。 昨年に読んだ本の中で良かったものを紹介した記事(2021年に読んで心に残った書籍10選)が好評だったので、今回は上半期に読んだ本から選んでみました。 1. 問いかけの作法チームミーティングにおける「問いかけ」に落とし込んだ実践書です。 「ファクトリー型からワークショップ型へ」と書かれていましたが、私の会社もファクトリー型組織ではなくて、ワークショップ型組織がいいのだろうな、と思って

甲子園は通過点です

「甲子園は通過点です」という本がおもしろいですよ、と教えてもらいました。 書籍 「甲子園は通過点です」出版社による書籍の説明には、こう書いてあります。 内容も面白そうだと思いましたが、「甲子園は通過点です」というタイトルが時代を上手く反映しているように思えて響くものがあり、早速買って読んでみました。 県予選で登板回避した佐々木朗希投手の賛否書籍中では、2019年に現千葉ロッテマリーンズの佐々木投手が高校生だった時の話が書かれていました。エースだったのに、甲子園行きがかか

【ピーターの法則】なぜ能力主義の階層組織では各階層が無能な人間で埋め尽くされるのか

半世紀以上も読み継がれる「無能」についての論文1969年に刊行された「ピーターの法則(The Peter Principle)」は、今でも世界中で読み継がれています。「マーフィーの法則」ではありません。 なぜあの人は、昇進した途端にダメになったのか? 会社に無能があふれる理由を長年にわたって無能の研究に打ち込んできたピーター博士が「階層社会学」で暴きます。 ピーター博士は研究を続けていくうちに、こんなことに気がつきました。 ピーターの法則とはピーターの法則をまとめると、

人を嫌わず、ゲームを嫌おう

極端に有利なゲームに勝っても、人は自分の行動で勝ったと考えるこんな実験が行われました。これは、TEDで語られていた話です。 そうなると当然の結果として「金持ち」に割り当てられた人がゲームに勝つのですが、この実験の結論は以下となりました。 つまり、「人間は富のレベルが上がると、慈悲や同情の気持ちが減り、権利意識や自己利益についての観念が強くなる」ということです。 そして、いわゆる勝ち組は、状況が自分をそのポジションをつくったのではなく、あくまでも自分の行動や実力が今をつく

速い思考と遅い思考(システム1とシステム2)

社内の研修で顧客交渉のロールプレイをする場面がありました。 顧客のニーズと、こちらのニーズがいくつかあって、一致しているものもあれば、不整合なものもいくつかあります。ケースの中では、それぞれの背景や立ち位置などの複雑な文脈があるのですが、単純化すると「不整合なニーズ」は2つでした。これを説得することになります。 かなり限られた時間で行うのですが、緻密に論理構成を考えて記憶しようとするタイプの人もいれば、ざっくりと要点を捉えてストーリーとして頭の中に入れておくタイプの人もい

働く動機を上げるもの、下げるもの

ロチェスター大学のエドワード・デシとリチャード・ライアンが、人間の働く動機を6つのカテゴリーに大別しました。「楽しさ」「目的」「可能性」「感情的圧力」「経済的圧力」「惰性」です。 「楽しさ」「目的」「可能性」の3つの動機はパフォーマンスを向上させ、「感情的圧力」「経済的圧力」「惰性」の3つの動機は低減させることがわかっています。 これは、「人間行動における内発的動機づけと自己決定」という論文で発表され、2万2000回以上も他の論文に引用されています。通常、論文が10年間に

本は最初から最後まで読まなくてもいい

「永江さんはたくさん本を読んでいますが、どうすればそんなにたくさん読めるようになるのですか?」と聞かれることがあります。 こんなことをしているので、本を読んでいるイメージがついたのかもしれません。読んだ本を1冊紹介する朝会も、もうすぐ300回を迎えることになります。コロナ禍になってから始めたのですが、けっこうな回数になってきました。もともとの趣味のようなものですが、年間の読書数は200冊前後になっていると思います。図書館を利用しないので、年間の書籍代は40〜50万円ぐらいか

共感の崖を踏みはずすとき

今、驚くべき早さと破壊力で世界が壊れていることで、心が痛いです。被害にあった人たち、大変な状況におかれている人たち、家族や身近な人の身を案じなければならない人たちのことを想像すると、つらく、心が重たくなります。気がつけばニュースを読み漁っている自分がいます。 今の自分の精神的な状況は、書籍「Compassion(コンパッション)」に書かれていたことだ、と思い出しました。 苦しんでいる人に同化し過ぎてしまうと、「共感の崖をふみはずしてしまうことがある」ということです。 行

マネージャの心得

「急成長を導くマネージャーの型  ~地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント」を読みました。 noteで3261(2022年2月25日時点)ものスキを集めた話題の記事が書籍化されています。noteにも300枚のスライドが公開され、惜しげもなく無料でノウハウを読むことができます。書籍は基本的にはこちらで書かれている内容ではありますが、さらに読みやすくまとまっています。繰り返し読みたいと思われた方には書籍購入がおすすめです。 この書籍の中に、「マネージャの立ち位

職場の賢者「モダンエルダー(新しい年長者)」になる

めちゃめちゃおもしろい本を見つけたので、最近は年の近しい人に勧めまくっています。 どういう本か26〜52歳まで ブティックホテル業の起業家だった著者のチップ・コンリーは、2013年頃に急成長中のテクノロジー新興企業であるAirbnb社の創業者ブライアン・チェスキーに「Airbnbを世界的なサービス業ブランドにすることとCEOお抱えの助言者になる」ために呼ばれました。 若きCEOはチップ・コンリーの業界知識を見込んで招いたのに、実際に提供したのは「長年培った知恵だった」とい

敵とのコラボレーション ―― 賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法

著者であるアダム・カヘン氏は2018年11月1日に来日して講演をした。私も参加したかったのだが残念ながら都合をつけることができなかった。 「敵とのコラボレーション ―― 賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法」という刺激的なタイトルは、日々複雑で安定しないコミュニティとのコミュニケーションに苦労しながら対峙している自分にとっては魅力的なタイトルだった。 本書では次のことを求めてくる。まず賛同できない人とコラボレーション(協働)せよ、と。これはそれほど難

弓と禅

書籍「新訳 弓と禅」についてこの書籍は、オイゲン・ヘリゲル著「弓と禅」1948年と、その元になった講演「武士道的な弓道」1936年を一冊にした本です。さらに、師匠の阿波範士とヘリゲルの対話を通訳した小町谷操三氏の「ヘリゲル君と弓」、「旧版への訳者後記から」「新訳への訳者後記」も加わっていて、読み物として大変おもしろいものになっています。 ドイツ人の哲学者が日本に来て数年間、全身全霊で射る中で無心を体験することに弓道の奥義があると唱えた師について弓道を学ぶ中で、身体遣いが変わり

Compassion(コンパッション)

書籍「Compassion(コンパッション)」英治出版より4月に発売予定の「Compassion(コンパッション)〜状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力 〜」をご献本いただいたので出版前に読むことができました。 著者はTEDにも出ていたジョアン・ハリファックス老師。ワークショップで来日された時に2度お会いしたことがありますが、その柔らかく優しい雰囲気は場の空気を変えるようなオーラをまとっている方でした。動画ではそこまでは伝わってこないのですが、実際に