人を嫌わず、ゲームを嫌おう

極端に有利なゲームに勝っても、人は自分の行動で勝ったと考える

こんな実験が行われました。これは、TEDで語られていた話です。

UCバークレー校の研究室に被験者を呼び、初めて会った人同士 100組以上のペアを作り、コインを投げて無作為にペアの一人を金持ちに割り当て、ゲーム(モノポリー)をやってもらいました。金持ち側は2倍のお金をもらいます。「GO」のマスを通ったらサラリーは2倍もらえ、サイコロは1個ではなく2個振れます。そのため、金持ちはうんと早く進めるわけです。

そうなると当然の結果として「金持ち」に割り当てられた人がゲームに勝つのですが、この実験の結論は以下となりました。

大変興味深かったのは、15分間のゲーム終了後にプレイヤーたちにゲーム中の経験について語ってもらったことです。金持ちのプレイヤーは必然的に勝った理由を述べる時、彼らは様々な資産を購入したり、成功を収めるために 自分が何をしたか語りました。いろいろあったはずの状況の違いは、まるで気にしなくなっていました。最初にコインを投げて、たまたま有利な立場になったことも全然気にしなくなっていたのです。これは人が優位性に対し、人がどう辻褄を合わせるか、その本質を実に見事なまでに突いています。

つまり、「人間は富のレベルが上がると、慈悲や同情の気持ちが減り、権利意識や自己利益についての観念が強くなる」ということです。

そして、いわゆる勝ち組は、状況が自分をそのポジションをつくったのではなく、あくまでも自分の行動や実力が今をつくった、と考えるのです。これは多くの人が持つ傾向であり、人間の特性です。

「ゲームで金持ちに割り当てられた話」を仕事に当てはめてみると、1つの組織の中で目標設定の難易度に人や部署ごとに違いがあり、それを正しく評価されていない状況で起こり得ると思います。この場合、目標達成をしている部署の人が「達成をしていない部署を下に見ている」ということが起こるかもしれません。たとえ、自分の部署の目標難易度がとても低くて、他の部署の目標難易度がとても高いものだとしても。

非難バイアス

上記の特性は、非難バイアスという傾向もつくり出します。非難バイアスとは「失敗したり上手くいかなかったことの原因は、状況ではなく人に原因がある」と私たちが考えてしまう傾向のことです。

書籍「マッキンゼー流 最高の社風のつくり方」には、非難バイアスについても書かれています。

本書の中では、このような問いかけがあります。

もしあなたが鉱山や工場の監督者で、状況より人を非難するバイアスを持っているとしたら、安全性を向上させるために何をするだろうか?

部下全員に研修コースをもっと多く受けさせるかもしれないし、安全基準を守る人にボーナスを出すかもしれない。しかし、危険な場所を黄色に塗る、製造工程を変える、機械のメンテナンスの回数を増やす、というように、システムの改善を図る可能性は低い。

マッキンゼー流 最高の社風のつくり方 第5章 非難バイアス

失敗の原因は、状況や環境にあるのではなく、人にある、という考えです。

実際の組織の中にある非難バイアス

そして、これは組織の中で常に目にすることであるとも言われています。

あるマネージャが売上目標を達成できなかったのはなぜだろうか?
 → そのマネージャが怠け者、能力が足りないからだ

ある担当者の仕事がずさんなのはなぜだろうか?
 → その担当者が愚かだからだ

ある上級管理職が不正行為を働いたのはなぜだろう?
 → その上級管理職は倫理観に欠ける人間で、幼少の頃に家族に愛されていなかったからだ

結果が出ていない限り、自責的に考えようとする姿勢があるほど、反論しづらくなります。状況や環境に目がいかずに全て人に原因があると評価されていることもあるでしょう。

非難バイアスがかからない方法

非難バイアスを減らす方法として、「フィードバックのREAPモデル」があります。

思い出す(Remember)
ある問題のことで、自分が誰かを非難していることに気づいたら、自制して、「相手に悪気はない」という言葉を思い出そう。

説明する(Explain)
部下に話しかける前に、相手の行動を説明するシナリオ、すなわち相手に問題があるとしないシナリオを5つ、考えてみる。

尋ねる(Ask)
話す準備が整ったら、まず相手に悪気がなかったという前提で、自分が見たことを伝え、その理由を尋ねよう。

計画する(Plan)
部下と一緒に、根本的な原因を突き止め、それを改善するための計画を立てる。

マッキンゼー流 最高の社風のつくり方 第5章 非難バイアス

これはフィードバックの良い方法ですが、失敗の原因を人ではなく状況に求め、仕組みとして改善することをされている会社もあるようです。

実際の業績も右肩上がりですごいです。


何か問題が起こったら、まずは人に問題があるとしないシナリオから考えてみよう。

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