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2022年下半期に読んで心に残った書籍5選

2022年も間もなく終わろうとしています。昨年に比べると本を読む量が減ってきました。今では週に1〜2冊程度です。それでも半年の間に多くの素晴らしい本に出会うことができました。上半期に引き続き、読んだ本の中で良かった書籍を紹介します。


1. 経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術

「人を選ぶ」ことについてシステマチックに解説された本です。

人の器の大きさ、伸びしろは「好奇心」「洞察力」「共鳴力」「胆力」の4つの因子で測ることができるとズバリ言い切っている。

これは、コンピテンシーモデルよりも下の階層にある、ポテンシャルモデルについての話です。表面化しづらいので発見しづらく、後天的に変化もしづらい人の特性ですが、自分の経験してきたことと当てはめてみると、的を得た説明が書かれていると思いました。

「人の見抜き」についてここまで言語化された本は多くないのではないかと思います。

2. 哲学は資本主義を変えられるか ヘーゲル哲学再考

長い歴史で見れば、哲学者たちが政治と経済に影響を与えてきたことがよくわかる本です。今まで見えていなかった視点が手に入る、貴重な本でした。

ルソーが「社会契約論」で示した「原理」とはどういうものだったか。普遍闘争状態を制御し、しかもその上で各人の「自由」を確保する「原理」が、1つだけある。戦いが「覇権王」を作り出す前に、社会の成員全てが互いを「自由」な存在として認め合い、その上でその権限を集めて「人民主権」に基づく統治権力を創出すること、これである。

ヘーゲルは、ロックからカントに至る、理念的かつ、当為的な「自由」論を批判・修正しつつ、ホッブズとルソーの原理に力点をおいて、これを「自由の相互承認」という考え方へと展開した、と言える。

その時々の時代背景の中で、次の社会を構想し、設計をする役割を哲学者は担ってきました。思想があり、次の政治と経済がつくられてきたことが、歴史を俯瞰的に眺めてみると気がつくことができます。そして、それは、今に至るまで続いています。

3. なぜ、あなたがリーダーなのか――本物は「自分らしさ」を武器にする

数多くあるリーダーシップ関連本を読んできましたが、読みやすく、良い本だったと思います。

リーダーはまず、状況を把握し、背景にあるコンテクストーー陰に絡み合う様々な要因ーーを見極める。そして、これらの要因への働き方を通じて、現場を打破していく。自らが持つ資質を、この一連の流れの中で十分に生かしきる。そんな人物こそが、優れたリーダーなのだ。

優れたリーダーは、役割を果たす上で役立ちうる「自分ならではの持ち味」を認識している。そして、それらが「どんなものであれ」活用している。これがわれわれの主張だ。付け加えればこの持ち味は、「周囲に対して意味のあるもの」だ。

近年よく語られる「自分らしさ」が必要条件の1つと本書でも書かれていますが、それは「周囲に対して意味のあるもの」でなくてはならないという主張があり、その通りだと思いました。

4. 会社はこれからどうなるのか

本書によると、日本の大企業は「会社共同体」的な会社であると書かれています。日本企業(大企業)の特徴は以下と書かれています。

① 日本の多くの会社の株主は欧米に比べて発言力が弱く、会社の経営にほとんど口をはさむことができない
②日本の多くの会社の経営者は、会社組織内の昇進競争によって従業員の中から選ばれており利益率よりは会社組織それ自体の拡大を目標とした経営を行っている
③日本の会社の中核的な従業員は、終身雇用制、年功賃金制、会社別組合に守られており、会社に対して強い帰属意識を持っている
④日本の会社の生産や流通や開発の現場においては、上下の命令指揮系統よりは、情報を共有した従業員のインフォーマルな関係が重視されている
⑤日本の多くの会社はいくつかのグループを作り、お互いの株式を持ち合い、系列関係を長期的に維持している
⑥自らを頂点として、その下に下請け、孫請けと拡がっていく垂直的な系列関係を長期的に維持している
⑦長期的な貸借関係を保っているメインバンクから、おもに資金を調達している

一方で、1970年代に主張されたエージェンシー理論では、取締役・経営陣は株主の代理人(エージェント)であるという立場をとります。経営目標は、あくまでも株主利益の最大化です。特に20世紀のアメリカ型の企業をイメージさせますが、現在でも、この考えを支持している人も多いように思います。

そして、現在では、ポスト資本主義とも言われる、20世紀とは異なる世界になってきています。優れた個人の力がものをいう時代であると同時に、優れた組織の力がものを言う時代です。この時代の変化の中で、会社はこれからどうなるのか、を考えさせられる本でした。

5. むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ

子どもの関係性は「いる(being)」「なる(becoming)」「する(doing)」という順番になるが、大人になると「する」「(同僚に)なる」「(ごくまれに公私を超えて)いる」という順番になるという話が興味深いと思いました。

最新のウェルビーイング研究に関する知見をシンプルな言葉でまとめると、次の2要素が「効く」ことがわかっています。「選択肢がある」「自己決定できる」。つまり、「どう生きるかの選択肢があり、その中から自己決定できる」ということが、ウェルビーイングに生きるポイントになります。

「ウェルビーイングとは人生全体に対する主観的な評価である『満足』と、日々の体験に基づく『幸福』の2項目によって測定できる」シンプルに圧縮するならば、「満足」と「幸福」の2つが揃えばおおむねウェルビーイングであろうと考えられているわけです。

技能や能力、経済性などの「する」が上手ではなくても許されるという寛容さがある、その人自身がそのまま受け入れられる「いる」から始まった関係性やチームの中にいることが、ウェルビーイングに大きな影響を与えるのだと思います。企業として、どのような組織をつくっていくのがよいのかを考えさせられる本でした。


2023年も素敵な本と出会えますように!

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