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企業とは何か(学生向けのスピーチ)

数百名の学生向けに「企業とは何か」というスピーチをすることになりました。(という通っている大学院の課題があったので、その内容を転載)

聞く人の前提として、まだ社会に出ていない大学生とします。自分の進路について考えていて、経験はないものの「企業とは何か」を考えはじめている人たち、を仮の設定とします。

企業とは何か

企業とは、世の中の誰かの、何かの役に立つために存在します。社会をよりよくするための器です。企業は、社会から求められることにより、存在し続けることができます。
社会に存在し続けるためには、対価を払ってでも製品を購入したい、サービスを受けたい、と思われる必要があります。社会から求められることがなくなると、お金を支払ってくれる人が減り、最後には、企業は存在することができなくなってしまいます。

なぜ企業をつくるのか。企業に多くの資本と人を集めることで、個人では実現することができない大きな課題解決ができるようになるからです。例えば、資本が大きくなれば、個人では買えないような設備や機材を購入して、製品やサービスをつくることができます。優秀な従業員を増やして難しい問題解決をすることができるようにもなります。

なぜ企業は存在するのか

また、個人や、小さな集団では不可能だと思われるような解決策を企業は生み出すことができます。研究開発のようなことも、大きな資本を提供することにより、初めて実現できることがあります。研究をするには長い時間がかかります。それには大きなコストがかかりますし、その期間、優秀な人を集めて、給料を払い続ける必要も出てきます。その人たちが優秀な人であればあるほど、高い給与を支払わなくてはなりません。そのような人たちが沢山集めることができ、長い期間を研究にかけることができれば、普通の人たちには実現できないような、新しく創造的な問題解決策を生み出すことができます。そして、それを社会に届けることが、企業の存在価値になります。

企業の主要な関係者とは

そして、企業には、さまざまな利害関係者がいます。企業を経営をする上で、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者のことをステークホルダーといいます。ステークホルダーには、経営者と従業員、顧客だけではなく、取引先企業、株主、地域の人たち、金融機関、行政機関、その他の団体などが含まれます。

すべてのステークホルダーに対して敬意を払い、良好な関係を保つことができるほど、事業を長く継続することができ、その結果、企業が成長して提供できることが大きくなります。この好循環を続けることができれば、企業はますます繁栄することにつながっていきます。

関係者には何を期待し、何を約束するのか

ステークホルダーに敬意を払うのは気持ちだけではなく、行動にも反映させていかなくてはなりません。価値を共に生み出していくためには、より能力の高い個人や企業などの団体と手を組んでいく必要があります。そのパートナーシップを締結していくためには、お互いに選び、選ばれることになります。そのため、相手を選ぶことだけを考えるのではなく、自分の価値を上げるための努力を弛まずにすることが必要です。お互いに利益があるように、選び、選ばれるのです。例えば、企業と従業員の関係もそうですし、ビジネスパートナーになる取引先も同じです。どちらかが一方的に利益を搾取しようとすると、すぐに一方から離れていくことになります。また、お互いに高い付加価値を与え合う関係ではないと判断される場合も、いつかは一方から離れていくことになるので、長続きしなくなります。

良い関係をスタートし、それを継続するには、自分だけの利益だけではなく、相手の利益にもなることを共通のゴールとして目指すことが重要になります。例えば、従業員との関係で言えば、できるだけ高い報酬を提供していくことも企業ができる約束の1つです。そして、給料だけではなく、成長機会を提供し続けることも中長期的な観点では、とても重要な要素になります。関係性の維持は双方向に価値を提供するものだとすると、その成長機会の中で、従業員は成長を続け、高い付加価値を提供し続けることが企業へのリターンになります。

関係者とは、企業と従業員のことだけではなく、全てのステークホルダーのことです。上記は1つの例ですが、各ステークホルダーの間で、何を利益と考えられるかは異なってきます。ですが、利益を享受できるステークホルダーが増えれば増えるほど、企業はより大きな組織能力を持てるようになり、提供できる価値も高まり、企業が得る対価も大きくなっていきます。

なぜなら、消費者・ユーザーはより多くの対価を支払うようになり、それを財源として、企業は、より優秀な従業員やビジネスパートナーと高い報酬の雇用契約とパートナー契約を締結することができるようになるからです。より優秀な人たちが働いてくれるようになると、提供できるサービス価値が向上していきます。

企業は社会に対してどんな責任を負うのか

そして、企業は社会に対する責任を問われます。その社会に対する責任はますます重要性が高まってきています。近年では直接の商取引に関係していない人たちに対しても、環境などに悪い影響がないかを求められるなどの、社会倫理性が問われるようになってきました。

背景としては、経済のグローバリゼーションが急速に進展してきたことがあります。多国籍企業が巨大化する一方で、環境問題、低コストを求めて途上国に伸張するサプライチェーンの中での強制労働、児童労働などに代表される人権問題、貧富の格差拡大などが深刻化しました。また、90年代から2000年代にかけて、企業の不祥事も世界的に頻発しました。企業には、財務面だけでなく、社会や環境に対する責任が強く求められるようになりました。

インターネットの誕生後、私たちは情報を簡単に発信することができ、入手することができるようになりました。特定のメディアからの情報しかなかった時代から、今はSNSの発展もあり、あらゆる人が情報を発信し、入手することが可能になりました。その結果、社会に対する悪影響と考えられる企業行動はつまびらかにされ、批判的な消費者運動にもなり、経済的な打撃になる事例も出てきました。

そのため、以前よりも厳しく、広い範囲で直接的または間接的に影響を受けるステークホルダーまでの責任を企業は問われることになってきています。以前はおよそ2次請けのサプライチェーンまでへの対応しか問われなかったことが、たとえ10次先以上であっても、すべてのサプライチェーンの活動に対する社会的影響の結果を問われるようになりました。

未来の経営者リーダーの役割とは何か

企業を経営するとは、何が求められるのでしょうか。経営者とは、自分の会社の利益を増大させるだけではなく、企業が発展すればするほど広く社会に対する責任を問われるし、考えていかなくてはなりません。

顧客から対価を払ってもよいと思われることで利益を得ることが存続の最低条件ですが、それにとどまらずに広く社会とは何かを考え、その一員として貢献できることを増やしていくことが、規模が大きくなるほど、継続する期間が長くなるほど、企業が発展するほどに求められていきます。

ですが、経営者の出発点としては、まずはステークホルダーに何かを求めるのではなく、自分が敬意を持たれるのに相応しい行動をし、そのような存在になることから始めるのがよいでしょう。社会は変化をし続けるし、唯一の経営についての正解があるわけではありません。自分なりの哲学や、考える軸をしっかりと持っておくことが大切です。

そして、社会に対してどれくら大きな志を持てるかにより、それを発展的に進歩させるための活動を続けていくことができ、提供できる価値を大きくすることができるようになるでしょう。



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