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死にたい気持ちを抱えた人の心の居場所、ってどうやって作るのだろう。京都自死自殺相談センターSottoのご紹介

おはようございます。エンコミュニティラボの山中です。

今日は私がファンドレイジンザーとして4月から関わっている、大好きな認定NPO法人京都自殺自死相談センターSottoさんのご紹介をさせてください!
特にお伝えしたいのは、活動内容というよりも、その奥にある理念やあり方です。
私自身の「自死」の価値観にも大きな変化がありました。そんなお話をかけたらと思います。


1.とはいえまずは活動内容

Sottoは2010年に「自死・自殺」にまつわる苦悩を抱える方のための相談窓口として設立された団体で、事業内容は大きく3つあります。

①相談事業(電話、メール相談、身近な方を自死で亡くした方の個別相談)
②イベント(おでんの会やごろごろシネマなど、死にたい想いを抱えた人がほっとくつろげる場作り)
③情報発信(講演会、シンポジウム、You Tube発信。
また、「聴き方のお稽古」という、Sottoが電話・メールで年間3,000件以上の相談を受けるなかで培ってきた「聴く」姿勢について、体験的に学ぶ会などをされています。

2.「聴く」姿勢、の本質って?

昔、母が電話相談で夜勤のボランティアをしていました。「死にたいって電話がかかってくると一瞬手に汗を握る」と母が話しているのを聞き、そんな人にいったいなんと答えたらいいのだろう、と考え、全然思い浮かばなかった中学生の頃の記憶があります。

そんな私の疑問に答えてくれる文章が、Sottoの夏の寄付のお願いページにありました。少し長いですが抜粋します。

今年も夏の終わりがやってきます。

毎年この時期になると学生さんから「死にたい」との相談が多く寄せられます。生きづらさを抱える人にとって新学期はそれほど恐ろしいものです。


ある深夜の電話で「今から死ぬ」との相談に応じていた時のこと。2 時間ほど、どんなことがしんどくて、耐えられなくて、もう死ぬしかないのか、涙ながらにとことん話し合いました。
聴けば聴くほど、生きていてもつらいばかりで「死ぬしかない」のも当然だと心から感じました。
そして最後に「わかってくれて嬉しいです。でもやっぱり、今から死にます」と言われ、祈るような気持ちで「うん、、、分かりました」と言葉を絞りだして受話器を置きました。

翌日、「やっぱり死ぬのをやめました」と電話があり安堵し、そして「死なずにいられました」と報告してくれるくらいの関係になっていたことに心が温かくなりました。


どうしようもない孤独を感じた時、誰かが温かくそっと傍にいてくれるだけで、どれだけ心が安らぐことでしょう。これまでの人生で、そんな温もりをもらった経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。

「死にたい」には、大きな孤独感が伴います。その孤独感を和らげるために、Sottoは死にたい気持ちを抱える方の側に、心からの温もりを持ってそっと居続ける【心の居場所づくり】をしています。

いかがでしょうか。感情を揺さぶる文章だなぁと思うのですが、私はこれを読んで、聴くことの本質って、「その人の、そばに、いる。」ってことなんだなぁ、と思いました。
聴いてもらった人は「わかってもらえた」「自分はひとりじゃない」と思えて、温かい、心の居場所がそこに生まれるんだなぁと思いました。

そういえば、10代や20代のころ、ぐちゃぐちゃな感情の時、しっかりと聞いて受け止めてくれた友人の存在もそうだったな、と思ったり。自分の価値観や人生の目的などを話し合ったときも深く繋がってわかりあった気持ちを抱けたなぁ。など、いろいろ思い出します。

改めてそう考えると、あれを一期一会の電話やメールでの相談に応じる中で行えるSottoのスタッフの方ってすごいなと思います。
「聴き方のおけいこ」の受講生の方は、その後にSottoのマンスリーサポーターになっていただける方も多いと聞きます。Sottoの真髄が詰まっているんですね。
ご関心のある方は、2時間バージョンとがっつり2日バージョンがあります。ぜひチェックしてみて下さい。

3.ミッションに現れてるSottoの在り方

あと一つ紹介したいことは、Sottoが掲げる世界観です。

ミッション
自死·自殺にまつわる苦悩を抱えた方の心の居場所づくり

作りたい社会
1. 価値の多様性がある社会
2. 誰しもがひとりぼっちにならない社会
3. 自死の苦悩を受け取ることのできる社会
4. 慈しみに満ちた優しい社会

Sottoが目指すこと
1. 自死は、「ある」もので「良い」「悪い」という価値観は問題にしない
2. 自死の苦悩を抱えたときに安心して居られる居場所をつくる
3. 自死の苦悩は自分事になり得ることを共有する

Sotto HPより抜粋 https://www.kyoto-jsc.jp/

4.自死は、「ある」もので「良い」「悪い」という価値観は問題にしない

「日本では自死を選ぶ方が増えています」と、グラフがバーンと出てくると、「確かに増えている。なんとかしないと!」と、「自死=社会課題」と捉えてしまいがちです。
そうすると自然と「自死対策」とか「自死防止」という思考に陥ってしまいます。

また、もともと「自死=いけないこと」「自死=弱さ、逃げ」のような社会的なスティグマがあるので、ついつい「自死をなくすためにできること」というような目線になってしまうなぁと思います。

ミクロとマクロで考えるのは大切だし、困っている人の話を聴きつつ、社会的な問題としてどう取り組むかを考えるのは大切。それが悪いって言っているんじゃないんですよ。

ただ、私も高校生のときに友人が突然亡くなって、つらくてつらくて生きているだけで痛かったので、死にたいなぁと線路を眺めていたことがありました。
その時は「自分が死んだら周りに2重のつらい思いをさせるなぁ」という思いと、同じ痛みを抱える友人と共にいることでやり過ごせたのですが、あのときの自分に「自殺防止」という言葉はぜんぜんしっくりこないし、多分そんなスタンスで来られても絶対話を聞かなかっただろうなぁと思います。
社会の問題と自分の問題の乖離、ですかね。

そんな中、Sottoのように、自死の善悪を問わず、あるものとして扱い、その上で死にたいほどの孤独を抱えた人の気持に寄り添う、心の居場所をつくるという在り方って素敵だなぁと思うんです。

Sottoは仏教のお坊さんが多く在籍されているのですが、他の宗教とは違う、死を包み込む価値観が表れてるってのもあるのかもしれません。

Sottoの2023年7月号の会報に素敵なコラムがあったので抜粋して紹介します。

■まず、「死にたいあなた」がいる。

「当時の私を思い返しても、死を意識することが救いで、『生きていてほしい』という言葉が一番苦しかったです。誰よりも生きたいのは私だったので」
2022年9月 1 日に朝日新聞に掲載された、作家・村田沙耶香さんへのインタビュー記事の中の言葉です。

遺族会でも、「早く元気になってほしい」という言葉がつらかったということをよく聞きます。「生きていたらいいことがある」「死なないで」「まわりが悲しむ」「つらさを乗り越えて」......。どうしても、つらく苦しむ人、「死にたい」思いを抱えた人を目の前にし、その苦しみを受け止めきれず、 拒否し、自分の希望を押し付けるだけの言葉を発してしまいがちです。
まず、苦しんでいる、「死にたいあなた」がいる。それがすべてで、始まりなのだと思います。

しかし、「死にたい」気持ちを、否定せずそのまま受け止めることは、簡単なことではありません。 身近な存在、家族であれば、その人がいなくなってしまうかもしれない恐怖との狭間で、耐えきれないかもしれません(自分自身、以前にも増してさらに厳しいと思います)。第三者として、社会としてとなると、根強い「自死」そのものへの抵抗感があります。

ほんの少し前までは、自死は罪悪であり、絶対にすべきでないものという考えが多くを占めてい ました。そんな中で「死にたい」気持ちを抱くこと自体、否定されてきたように思います。最近は 表立って自死は悪と言うことは少なくなってきているように思いますが、それでも、家族が自死し たということを、まわりに言えず、隠しているという遺族は大勢います。
根強い特別な自死への否定的な見方が、遺族だけでなく、生きづらさを感じ、「死にたい」気持ちを抱く人への、行き場のなさを生んでいるように思えてなりません。

もちろん自死を肯定するつもりも、その必要もありません。ただ「生きづらさ」を抱えた人が、「死にたい」思いを抱き、どうしようもなくて本当に死んでしまうことがあるのは、肯定否定を超えて、 人間からは切り離せないものとして存在しているのだと感じています。

そっと Vol.147 7月号より抜粋。太字は山中
https://www.kyoto-jsc.jp/design/files/about/sotto/sotto_vol147.pdf

Sottoのミッションや価値観・世界観を表現されているコラムだなぁと思ったので紹介させていただきました。Sottoらしさ、を感じてもらえたら私まで嬉しいです。



長くなりましたが、以上、私がすごいなぁ!とおもうSottoのポイントを紹介させていただきました。

現在Sottoは夏の寄付のお願いをされています。
冒頭の抜粋にもあるように、新学期が始まる9月は学生さんからの相談が増えます。
また、スタッフの専門性が高いSottoも、大半がボランティアで運営されています。相談員の研鑽や、相談員の人に安心して活動してもらうためにも、ぜひ有償化して働いてもらえたらと考えておられます。
こちらのページをご覧いただき、Sottoを支える仲間になってもらえたら嬉しいです。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!
またお会いしましょう〜〜。

なんとなくタイの海を載せてみた。

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