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漫画万歳!(29) ~双亡亭壊すべし~

マザーブレイン社の月報に投稿した記事を紹介していきます。2019年4月からスタートしたシリーズを多少の修正を加えて掲載します。取り上げているのは原則として完結した漫画です。気ままな個人的な感想ですので、ご意見は大歓迎ですが、あまり真剣なご批判は、泣きたくなるのでご容赦願います。

MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT
(2021年8月号)

「うしおととら」「からくりサーカス」など、奇想天外でミステリアスな設定の中で、心優しく人を信じる強い心をもった登場人物たちを描いて感動をくれる漫画家・藤田和日郎(ふじたかずひろ)が、2016年から週刊少年サンデーで連載したのが「双亡亭壊すべし」(そうぼうていこわすべし)です。ついに全25巻で完結となりました。

スペクタクル・モダン・ホラーなのだそうですが、なんかタイトルが気になりました。当初は、「あの家を壊せ」だったそうなのでそれよりはいいんでしょうね。読んでいるうちに双亡亭という幽霊屋敷が主人公とさえ思えるようになり納得です。

立ち入った人が取り込まれて帰って来ない「双亡亭」は、空爆しても壊すことができず、破壊することが国家プロジェクトとなります。近所に住んでいた絵本作家志望の凧葉務(たこはつとむ)が、引っ越してきた少年緑朗(ろくろう)に会い、軽い気持ちで屋敷の探検の話をしたせいで、緑朗の父が双亡亭の犠牲となりました。それをきっかけに、双亡亭を壊すだけではなく、45年前に旅客機に乗ったまま行方不明となり特殊能力を身につけた凧葉青一や緑朗の姉、科学者チームや突入部隊、心霊能力者や大富豪夫妻などが加わって、地球が戦略されるかどうかの壮絶な戦いをすることになります。

双亡亭の主は、資産家の息子で絵描きの坂巻泥努(さかまきでいど)、彼がすべての鍵を握っていますが、どうにも偏屈で人とコミュニケーションをとることができません。登場人物それぞれが物語を持っていて、時に残酷で救いようがなかったりして、いちいちそのドラマに衝撃を受けながら読み進めることになります。藤田のポリシーは、「わかりやすくいい読後感を読者に与える」ことだそうですので、どんな切ないシーンも我慢できます。少年のような心になれますので、ぜひ読んでみてください。            


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