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なにも8月31日だからという話じゃなくてさ。

大学時代、単位の頭数合わせに取っていた心理学入門の授業で言われた言葉が、今でも忘れられない。授業を担当していた先生が、学生から「うつの人間に絶対にかけてはいけない言葉はありますか」という質問が飛んだ時、先生は穏やかな口調でこう言ったのだ。

「うつだとか、うつじゃないとか、そういうことは関係ありません。相手が言われたら嫌だと思う言葉は、理由はどうあれ言ってはいけません。それだけのことです」

まだメンタルヘルスという概念もなく、弱いからいじめられるんだ、不登校は甘えだなどという「固定観念」という鈍器で、何度も何度も心の脳震盪を起こしていた当時の自分には、その言葉は目から鱗だった。先生いわく、悩みを抱えていようがいまいが、病んでいようがいまいが、同じ人間なんだからまずそこは想像力で相手を思いやれ、そのために君たちは勉強をしているんじゃないのかと。鱗の数が足りなくなったのは言うまでもない。

あくまで対等な人間同士。みんな違ってみんなしんどい。人間ってそういうものじゃないのだろうか。だから「不登校の子に~」とか「うつの人に~」とひとくくりにするのではなく、あくまで相手の目を見てきちんと向き合わないと、最終的に誰も幸せにならない。もちろん、禁句や地雷というものは必ず存在する。だからこそ、それを踏まえたうえで何ができるかが大事なのだ。

先生は、質問をした学生に「そういう質問をするということは、身近にそういう人がいるんですね。そしてその人のために何かしたいと思っている。僕は、その気持ちが一番大切だと思いますよ」と言っていた。してあげるのではなく、何かしたいという気持ち。そういう対等な思いやりでしか、自分も他人も含めて「人間」は救えない。その人間関係の基本のキを忘れずに生きていきたいと思う、8月31日の夜である。

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