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耽美ではない秋の訪れ。

鼻がふさがって夏の終わりを感じ、喉がふさがって秋の到来を知る。秋花粉に悩まされてる人には、あるある過ぎる季節の感じ方だろう。この時期は花粉が元気な時間帯に外に出ると息ができなくなるため、夜行性になってしまいがちなのだけれど、ヴァンパイア生活のきっかけがブタクサ花粉とは、まったくもって耽美ではない。

私は星空というものを愛せない体質である。子供の頃、通っていた小学校にあったプラネタリウム室が、導入されて一年もたたないうちに打ち捨てられ、その部屋で教員が気に入らない生徒をつるし上げたり、暴行を加えるようになったという地獄を目の当たりにしているからだろう。いわゆるトラウマ。私、ヴァンパイアじゃなくてよかったな。ヴァンパイアになってお城を持って、不死身の体と不老不死を手に入れたところで、満天の星空を見上げながら毎晩死にそうな思いをするだけってのは、耽美通り越して地獄だぞ。横浜の星なんて、ベイスターズだけで充分だ。この居直りがもうすでに耽美ではない。

そもそも私は酒が飲めない。スイーツに入っている香り付けの洋酒で酔うレベルなので、ご時世がこうなってからはノンアルコールの消毒液を持ち歩いている。肌も弱いので入浴剤もあまり使ったことがないし(これは強い香りに弱い実家の父のせいもあるかもしれない)薔薇の花びらを浮かべたお風呂などとも無縁だろう。そもそも、後片付けが大変そうとか、排水口つまったら大変だとか、そういうことしか思いつかない。マツキヨで買ったパイプクリーナーの存在を思い浮かべながら、薔薇には沈めないし。

秋のブタクサにも苦しめられるけれど、春は普通にスギと格闘しヒノキに悶絶しているので、ある意味年がら年中黄色い粉に振り回されている。そのため、薔薇園が一番綺麗な時に薔薇を見に行けないという業まで背負ってしまった。春はなんとか山下公園と港の見える丘公園へ行くことができたけれど、秋に鎌倉文学館の薔薇園を見に行こうとすると、花粉の合間をぬって軽い遠出をしなくてはいけない。ちなみに一昨年、ほんの少し世の中と花粉が落ち着いたすきを見て行くことができたけれど、薔薇園を散策しているマダムたちの「ノックアウトという薔薇の品種を花屋で買おうとして『ノックアウトをくださる?』と店員さんに言ったところ、ガーデニング用の防虫剤を持ってこられた」という耽美ではない話に全部持っていかれてしまった。どうしてこう、耽美を求めるとネタに行きつくのか。その謎を解明するために、今日もまた耽美とはなんぞやという話をしているのかもしれない、びえっくしょん。

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