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企業法務で働き始めたらまず気をつけたいこと5選。

ベンチャー企業、上場企業双方で働いてみて感じた、企業法務がうまく立ち回るための方法を整理しました。

基本的にはロースクールを卒業しているなど、法的な素養があることを前提としています。

高度な話ではなく、社会人未経験であればまずはこのへんから気をつけていけばある程度うまく立ち回れるかなというものです。

1,商流を理解しよう

法律系の職種で世間的に印象が強いのが、リスクばかり強調してビジネスを妨害してくる、説明がよくわからない、堅いといったことがあります。

また、実際に契約法務を行っていても、なんのための修正なのか分からない、存在しないリスクを主張して交渉が難航するということがあります。

これは、法律家のいうところの事実認定の部分に問題があると思われます。

現実のビジネスは経済活動として行われます。

具体的にはヒト、モノ、カネ、(情報)をヒトの間で行き来させることで成立します。そのため、この流れを正確に理解し、その流れを邪魔せずにリスクを最小化することが基本的にはリスク管理ということになります。

特にお金の流れが最重要となります。

ほとんどの場合、安く仕入れて高く売ることで利ざやを稼ぎますが、そのための全体の流れを理解する必要があります。

具体的には、①エンドユーザーに提供される商品はなにか②エンドユーザーまでに誰が関係しているか③商品の原材料は何か④誰がどのように関わっているか

以上の4点を大まかにでもおさえておくと全体像が見れると思います。

その上で、企業は利益追求組織ですので、キャッシュポイントがどこかを把握するのが最重要となります。(支払条件、支払時期、金額、支払方法、賠償金など)

また、著作権や所有権は、それがお金を生み出す源泉である場合は、特に重視してチェックする必要があります。逆にそれがお金にならない場合やすでに料金に組み込まれている場合は、移転の時期程度を気にすればよく、それ以上の配慮はそれほど必要ではなくなります。

2,商材を理解しよう

商流を理解したら次に自分の会社が取り扱っている主要な商材を理解しましょう。

車を売っているなら車、コンサルティングならコンサルの内容を理解する必要があります。

商流の中で自社が取り扱っている商材を理解すれば、会社がどのように利益を生み出しているを正確に理解できます。

また、その商材に関わる権利義務、許認可、届け出、管理体制といった契約にに関わらず副次的な法律的リスクを自然に洗い出せます。

例えば、人材紹介の場合商材はヒトですが、許認可事業ですし、派遣の場合は派遣先の労働条件や派遣先とのトラブルなども自然に想定できます。

商流と商材を組み合わせることで具体的な、特に企業に損失を生じるリスクを洗い出すことができます。

3,期待値を判定しよう

商流と商材を把握することでおよそ金銭的なリスクがどのような場合にいくらくらい発生するかが徐々に予想できるかと思います。

予防法務のうち、契約法務では商材に関係した契約を反復して行うことが予想されます。

そこで、期待値を用いてリスク判断を行うことが望まれます。

期待値に基づけば継続反復する取引において、長期的にどの程度の損失が発生するか予測できます。そして、それが利益の範囲内であれば企業活動は存続することができます。

具体的には、「損失の発生確率✕損失額」によって考えます。

例えば請負契約での商品が納品できない場合、売上がたたず、原価と販管費分マイナスが生じます。これが損失額となります。

ただ、メインの商材が納品できない可能性は通常はほとんどないため、商品の欠陥や顧客が受領しないなどの可能性が損失が生じる現実的な可能性と思われます。

そのため、具体的なリスクとしては単に納品できず売上がたたないということではなく、欠陥などでやむを得ず納品できない場合となります。

ただ、この発生確率も0.001%程度もないのではないでしょうか?これは企業や商材ごとに全くことなりますが、ここまでくるとこのリスクは無視していい程度の損失期待値となってくると思います。

以上から、具体的な損失リスクに具体的な発生確率を合わせることで、期待値が生じます。

この期待値を考慮してリスクに対応するべきか否かが判断できます。

この判断方法を用いれば、存在しないリスクに対応しようとして交渉が難航するようなことはなくなるかと思います。

4,ビジネスジャッジの支援をしよう

ここまでの商流、商材、期待値を考えることができれば、事業部門と共同でビジネスジャッジを行ったり、その支援を行うことができます。

(期待値は正確にでないこともありますが、大体であっても完全な感覚値での判断よりはマシになるかと思います。)

事業部の人間は法的なことはわかりませんが、経済活動としてお金が大切なことは共通理解になっていると思います。

そこで、金銭的な損失額はリスク判断の基準として判断しやすい指標となります。

また、商流、商材の特性を考慮した説明ができれば事業部側も納得しやすく、かつ、そのリスクを契約以外の例えば実務の運用の改善によって低減させるという判断も可能となります。

ここを合わせることで、現実的なリスク低減が可能となり取らなくて良いリスクを避け、利益を最大化するという企業活動に貢献できると思います。

5,ビジネスモデルを理解しよう

ここまでのまとめとなりますが、一言でいうとビジネスモデルを理解することが企業法務の前提となるかと思います。

ここは法律の事実認定に対応する部分となるため、ここの認識が不明であればどちらにしても正しい法律判断ができないことになってしまいます。

企業法務はビジネスですので、法律とういう評価軸の他にビジネスという評価軸を組み合わせて判断することが必要です。

ときにリスクがあってもそれをあえて行うという判断もビジネスでは起こります。それが良い悪いということではなく、企業とはそういう活動をするものです。

そこで、そこの判断を自分なりにでき、判断の支援をしていくことが企業内で法務的な支援を行う企業外の弁護士とはことなる、法務の仕事となると思います。

補足:結果は数年後

契約法務などは、事業部の担当者が変わるなどしてリスクが顕在化するまで時間がかかります、実際のトラブルを効率的に予防法務にフィードバックして初めて1巡となるため、長期的に気長な地道な努力が求められると思います。

既出ですが、上記の本を読むことをオススメします。期待値の考え方やクライアントを突き放した回答をしない方法についてより具体的に詳述されています。

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