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地方自治体の強制徴収債権に関して,回収の『キモ』となる【超強力】な権限についてのお話をします。

地方自治体の債権管理について,『明日からできる債権回収』をテーマに,過去の研修原稿をもとにして記事を書いています。
※ヘッダー画像は記事内容とは関係ありません。みんなのフォトギャラリーからお気に入りのものを使わせていただいてます。

どうもこんにちは,まっつんです。


今回は,地方自治体の債権のうち強制徴収債権にのみ与えられている【超強力な】権限についてお話したいと思います。

税金などの滞納が発生した場合,地方自治体の徴収職員が差押えできる財産は,預貯金や給与など数多くあることはお話しましたが,それらの財産をどうやって調べればよいのでしょうか。
また,どういった根拠に基づくものでしょうか。

いきなり答えを発表します。

『国税徴収法第141条』

にその根拠が規定されております。
そして,調査の対象者についても141条に記されているので,まずはこの条文を覚えておけば,滞納発生時に「どうしたらいいんだろう」なんて悩む必要はなくなります。

滞納が発生したときに,『一番初めにやることは財産調査』であると覚えてください。

では,条文を見てみましょう。

滞納処分のため滞納者の財産を調査する『必要があるとき』は,その『必要と認められる』範囲において云々

とあります。

その必要性は誰が判断すると思いますか?

それは『徴収職員』が必要と判断すればよいのです。

徴収職員自身が判断し,自らの権限で財産の調査ができるのです。
ものすごい権限だと思いませんか?

ちなみに民事執行における財産開示請求や第三者へ情報提供の規定においても,一度は裁判所に申し立てをしないといけませんし,実際に職員自らが調査をすることは認められておりません。

そう考えると,日本国憲法に規定されている,『納税の義務(第30条)』がいかに重いものか再認識させられます。

(憲法議論は置いといて)その調査の権限によってどういった人(相手)に調査をすることができるかをみていきたいと思います。

国税徴収法第141条第1項第1号〜4号に明確に示されています。

ただ,一般的にはちょっと難しい言い方になっているので,簡単に解説します。

第1号の滞納者,第4号の滞納者が株主又は出資者である法人というのは,そのままなので問題ないですよね。

問題は第2号と第3号です。
先ほどは明確に示されているとか言いましたが,はっきり言って,「なんだこりゃ」って感じです(年に数回はこの条文に関する質問を受けます)。

まず,第2号についてですが,これは滞納者の収入を妻の口座で受け取っている場合に,その妻の口座を調査することなどが,代表的な例です。
たまにこういう事例が出てきますが,妻といっても他人名義の預金口座なので,滞納者の財産と同一のものであることの裏付けを取るのが大変です。

次に,第3号です。
これは,2つに分かれるのですが,前半の『債権もしくは債務があり』というのは,給与等の支払者(給与支払いの債務がある者)や住宅ローンを組んでいる銀行(返済を受ける債権がある者)などが代表的です。
もっと噛み砕くと,滞納者との間に何らかの契約関係がある人たちと理解してください。

後半の『財産を取得したと認める』とは,滞納者から何かをもらった人(貴金属をもらった愛人など)がその対象となります。
私は,このケースは経験がありません。

これらの権限は,『質問検査権』と言われ,自体に強制力はないのですが,正当な理由なく拒否した場合は罰則規定がありますので,間接的に強制するものとなっておりますので,拒否された場合は粛々と罰則適用に動いてください。

また,この調査の対象者に対しては,あくまで協力者(情報提供者)として節度ある対応を心がけてください。
たまに,調査に非協力的な対象者もいるのですが,接遇には注意してください。
余計なクレームの原因になります。
以前聞いた話ですが,権限があることを盾にして,高圧的な聴取を行った人がいたようです。
もちろんかなり厳しいクレームが入ったと聞いています。

ちょっと余談になりますが,相手が滞納者だとしても,その対応は慎重にしてください。
確かに,相手が高圧的,威嚇するなどの場合には,厳しい言葉も必要な場面もありますが,あくまで『人対人』ということを忘れないでくださいね。
(類似の権限を有している特定の職業の方々などの徴収について,目に余る場面に遭遇したこともありますが……)

重ねてになりますが,この権限(差押えの権限も含めて)を,職員個人に与えられてたものと勘違いしている方が多いです。
職員自身の判断で調査や差押えを認められてはおりますが,一身専属のものではないので……

これは『徴収職員(徴税吏員)』という立場(職務)に付随しているだけなので,人事異動があれば『タダのヒト』になることを忘れないようにしてください。


ちょっと最後の方は,個人的な思いをぶっちゃけちゃいましたが,
それでは,今日はここまでにしたいと思います。
次回の記事も楽しみにしていてください。


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[引用研修]
令和元年11月29日 須崎県税事務所管内地方税研究会 徴収事務研修会
『徴収事務について』~徴収率UPのための滞納整理の実務~

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