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映画×クラシック=最高(2)【音学note Op.13】

こんにちは皆さん。映画音楽とクラシック音楽のふか〜い関係を探る、第二回。今回は実際に映画に使われたクラシック音楽を特集していきたいと思います。

1. 「2001年宇宙の旅」(1968年)

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(引用画像: neftali / Shutterstock.com)

クラシック音楽が使われた映画といえば必ず上がるこの作品。スタンリー・キューブリックが監督を務めたこの作品には実に8曲ものクラシック音楽作品が使われています。

・リゲティ・ジョルジュ作曲『アトモスフェール』、『ソプラノ、メゾ・ソプラノ、2つの混声合唱と管弦楽のためのレクイエム』、『ルクス・エテルナ』、『ヴォルーミナ』、『アヴァンテュール』
・リヒャルト・シュトラウス作曲『ツァラトゥストラはかく語りき』
・ヨハン・シュトラウス2世作曲『美しき青きドナウ』
・アラム・ハチャトゥリアン作曲『ガイーヌ』よりアダージョ

リゲティの作品はなんと彼の承諾のないまま使われていて、彼が印税を受け取ったのは1990年頃。公開から20年以上経ってからのことでした。どんだけ適当なんだ...。
この作品で何度か出てくるリゲティ作曲『アトモスフェール』という作品はミクロポリフォニーという作曲技法が使われています。「ミクロポリフォニー」っていきなり言われても????ですよね。これは日本語に訳すと「微小細密複音楽」。とても多くの声部を持った音楽で、この技法によって神秘的な音響効果が生み出されます。それがこの映画の雰囲気をより高めているのですね。


もう一つこの作品で特に有名になったのが、メインタイトルとして使われた『ツァラトゥストラはかく語りき』。この演奏に使われたのはヘルベルト・フォン・カラヤン(木星の記事で出てきたイケおじ)指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏でした。この作品はとても有名なので、皆さんも一度くらいは聴いたことがあるかもしれません。


2.ヴェニスに死す(1971年)

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(画像引用: (C)1971Warner bros)

もう、タイトルだけで泣いてしまう。映画ファンにお馴染み、トーマス・マンの同名の小説をルキノ・ヴィスコンティ監督が映画化したこの作品。この作品でテーマ曲に使われたのがグスタフ・マーラー作曲『交響曲第5番』第4楽章、通称「アダージェット」と呼ばれる作品です。
マーラーの交響曲第5番は全体を通して死や生といったテーマを扱っている中で、この4楽章のテーマは「」。マーラーはこの作品の作曲中に後に妻となるアルマと出会います。熱烈な恋をしたマーラーは当初構想になかったこの楽章を、第5番の中に入れました。その為この作品はマーラーからアルマへのラブレターとも言われているのです。因みにこのアルマ・マーラー、マーラーとの結婚前にはあの「接吻」の絵で有名なクリムトとも付き合っていたとか。芸術家を虜にする魔性の女ですねえ。


3.プラトーン(1986年)

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(画像引用:Movie Traveler)

3つめに紹介するのはベトナム戦争を題材にオリバー・ストーンが監督を務めた「プラトーン」。この作品にも、あるクラシック音楽が使用されています。それはサミュエル・バーバー(1910-1981)が作曲した「弦楽のためのアダージェット」。無惨なベトナム戦争を描いた映画のエンディングで、この作品は流れます。それはまるで苦悩や懊悩の果てに絞り出された諦めの音楽のようで、映画のテーマがより胸に迫りくるようです。
この「弦楽のためのアダージョ」は他の映画にも数多く使用されており、1980年のデヴィッド・リンチ監督作品『エレファント・マン』や、1992年ジョージ・ミラー監督作品『ロレンツォのオイル/命の詩』などで使われています。また、1963年にジョン・F・ケネディ大統領の葬儀に使われた事でも有名になりました。この作品も聴いていると胸が締め付けられて来ますよね...。


4.時計じかけのオレンジ(1971年)

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鬼才スタンリー・キューブリックが監督を務め、1971年に公開された風刺的作品。欲望が自由に発散される退廃的な社会と、管理された社会とのジレンマを描いたこの作品、主人公アレックスのクラシック音楽好きという設定を生かし、たくさんのクラシック作品が使われています。

ベートーヴェン作曲:交響曲第9番ニ短調
ロッシーニ作曲:『泥棒かささぎ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲
エルガー作曲:『威風堂々』第1番、第4番
ヘンリー・パーセル作曲:『メアリー女王の葬送音楽』
リムスキー=コルサコフ作曲:『シェヘラザード』

ベートーヴェンの「第九」は映画内でシンセサイザー用いて、まるでロックの様に演奏されたりと音楽の使い方も一癖あります。正直二度観たい映画ではないですが、描かれている世界観とメッセージ性、そして音楽との親和性には驚かされます。是非皆さんもその狂気の世界観を感じてみてください。


5.羊たちの沈黙(1991年)

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トマス・ハリスの同名小説を映画化したサイコホラーの超傑作。
連続殺人を追うFBI捜査官が捜査の助けを求めたのは、猟奇殺人犯として収監されている元精神科医のレクター博士でした。物語は二人の奇妙な交流と共にどんどん発展していき...。
この作品の中で実に効果的かつ印象的に使われているのが、J.S.バッハ作曲「ゴルドベルク変奏曲」。この曲はレクター博士の愛聴する作品として映画内に登場します。そしてレクター博士のこだわりポイントは作品のみではなく演奏者も指定していたこと。彼が好んで聴いていたのは「グレン・グールド」というピアノ界伝説の鬼才、奇才、天才の演奏するゴルドベルク変奏曲、という設定でした。そういうわけで映画内でもグールドの演奏するものが使用されています。因みにこのグールドのゴルドベルク変奏曲の録音は有名な物が2種類あり、「羊たちの沈黙」では1955年に録音された物、続編の「ハンニバル」では1981年に録音された物が使用されています。

せっかくなので1955年録音と1981年録音、両方聴いてみてください。同じ演奏者ですが受ける印象は全然違いますよ。(因みに彼は演奏中歌うことでも有名です。耳をそばだてたら彼の歌声が聞こえるかも)

1955年版

1981年版


まとめ

二回に渡った映画音楽とクラシック特集は如何でしたでしょうか?意外にも深ーい関係があったのですね。僕も益々興味が湧いたので早速映画を観に行こうかなと思います。観たい映画が沢山あるなぁ。では皆さんまた次の記事で。

さよなら、さよなら、さよなら...。


「コロンスタジオ&ムジカマニア」ライティング部

ライター: 青竹
Twitter:https://twitter.com/BWV_1080



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