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往復書簡④小齋→清尾「ACLの実感」その1

清尾さん、お疲れさまです!
レッドアイの件、私は塩もタバスコも入れますから、それを見た清尾さんがゲテモノと思っていたとしても致し方ないかと。

さて本題。
そういえば埼スタでのキックオフは19:30でしたね。
クラブが念入りに下調べをした上で開始時刻を決めた話は覚えています。調査そのものも、その後の決定もどちらも、クラブの本気度が伺える事がらでした。

19時開始の試合よりも大勢のサポーターを飲み込んで迎えた4月11日(水)、埼スタでの上海申花との一戦目。レッズはキックオフ直後からゴールに迫りました。
開始50秒あまり、永井がペナルティエリア内でいきなりの決定機。左からのクロスを右足で合わせるも枠を捉えられず。
7分にはターンしたワシントンがDFの隙間を縫うように右足アウトサイドでのシュートを放つも、GKがセーブ。ワシントンはその直後にもループシュートでゴールを狙ったものの、惜しくもバーの上。

巧みなターンからシュートを放ったワシントン(撮影:清尾 淳)


ノートを見返すと
【相手はまだ受け身、このうちに得点してしまいたいところ】
と記してあったのですが、チャンスは活かせず。
その後もポンテのパスで崩してワシントン、永井のふたりがゴールに迫るという形が何度か見られましたが0-0のまま時間は経過。
先制するのは42分、エリア外右で得たFKからでした。
得点者は阿部勇樹。
ポンテが蹴った浮き球にタイミングよく飛び込んで頭で叩き、ネットを揺らしました。

このゴール、阿部は「すごく普通に決めてる」んですよね。
でも実は、彼の傑出した能力のひとつ。
動く目標物に対して自分の身体をコントロールして合わせる『アジャスト能力』。
これが阿部は非常に高い。
アテネ五輪代表のフィジカルトレーナー氏のそんな阿部勇樹評を思い起こさせる一撃でした。

42分、FKから阿部のヘッドで先制(撮影:清尾 淳)


第1戦では、この阿部のゴール後に追加点は生まれず1-0で勝利。
2週間後にアウェイでの第2戦を迎えます。
さて、「2週間後に~」とサラッと書いてしまいましたが、ACLを振り返る上でそれは正確さを欠くのではと思い直しました。
ちょっとじっくり行きたいと思います。

◆4月11日、上海申花に1-0で勝利
◆4月15日、国立で柏レイソルに2-0で勝利
◆4月21日、埼スタで川崎フロンターレに1-2で敗れる
(なお、この敗戦でホーム無敗記録が25でストップ)

川崎戦は16時から。
試合が終わりメディア対応を済ませた選手たちが帰宅したのは、早くても21時前後だったでしょう。
で、翌22日14時半、チームは大原サッカー場を出発。
ノートには
【16:19、チームバス成田第1ターミナルに到着。スーツ姿の選手たちがバスから降り立つ】
と記してあります。
ちなみに、移動中はスーツ着用とはいえ、ネクタイまではしていなかったようで、【バスの中でネクタイ締めてから降りる選手もいれば、降りてから締める選手も】と書いてありました。


成田に到着。いざ上海へ!(撮影・清尾 淳)


上海遠征に限ったことではありませんが、遠征時の荷物量はかなりのもの。
このときの荷物はチームぶんだけで約60個。ボールをはじめとした練習用具・医療器材やアイスボックスなどなど、合計すると1.2トンもの荷物が。加えて、選手・スタッフ総勢30名ぶんのスーツケース。
チームぶんの荷物はスタッフが空港に先乗りして手続きをおこなっていましたが、移動先の空港に到着するのは同時刻。そのため、税関を抜けてくるのにかなりの時間待たされるのが常でした。

段ボールに記された「M」はメディカルのMだったはず(撮影:清尾 淳)


22日、上海に到着した際の天候は雨。この日はトレーニングは行わず、翌23日の16時から上海申花所有のトレーニング施設【上海申花足球倶楽部訓練基地】にて1時間ほど体を動かしています。
この施設、本当に【基地】みたいな広さ。
スタンド付きの陸上競技場に加えて、サッカーコートが10面。下部組織選手の宿舎と学校まで併設されているとのことでした。

試合2日前のトレーニングは上海申花足球倶楽部訓練基地にて(撮影:清尾 淳)


さらに試合前日の翌24日には、会場となる上海浦東源深体育場にて公式トレーニング。報道陣には冒頭の12分間だけが公開され、その後にはオジェック監督の会見も開かれました。

会見では中国メディアからこんな質問も。
「日本と中国のクラブの試合はメディアも大きく注目する。どのような態度で臨むつもりか」
監督はこう答えています。
「私自身がアジアから遠く離れたところから来ているが、あちらでもライバル関係というものはある。ここアジアでもそれは同じだろう。日本と中国のどちらがいいサッカーをするのか、そういったライバル関係がある。私自身の考えとしては、互いに切磋琢磨するという点でそういったライバル関係は非常に素晴らしいものだと思っている」

試合前日、トレーニング後の監督会見(撮影:清尾 淳)

おそらく中国メディア側の質問の意図は、もう少し異なるニュアンスを含んだものだったのでしょう。そしてきっとオジェック監督もそのことは承知の上で、敢えてこう答えたのではないか。
ノートを見返してみて、「オジェックさん、さすが海千山千だな」との印象をもったことを思い出しました。
同時に、シドニーではほとんど感じることのなかった、「ACL」であることの実感を覚えた瞬間だったような気もします。

(その2、へつづきます)


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