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唐種招霊と甕の話

5月7日 快晴

本日のBGM Curtis Lee


くろつる屋の白いバックの写真は
いつも庚申窯の2階で撮っているのですが
今日も天気が良かったので
その2階からの風景を。

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私の名前が高鶴裕太なのですが、
向かいの建物には庚申窯の本家である
高鶴窯があります。


焼き物の窯元は長男しか継げない
みたいな風習が昔はあったので、
末っ子だった私の祖父は高鶴窯から分離して
なかなか近いところに庚申窯を築きました。
いま庚申窯がある場所はもともと
高鶴窯の持ってた田んぼだったみたいですね。


写真の菜の花が生えてるところも
何年か前までは田んぼでしたが、
今ではレンタル畑になっているみたいです。
いつも何か作っていますが、今の時期は
特に何もないのか、放置された感じに。

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そのレンタル畑と庚申窯の境の石垣に
高さ1m半くらいの木があって、
なかなかよい感じの花をつけていました。
何か密教で使われそうな武器みたいでかっくいい。
調べたらカラタネオガタマという木なんだそうです。
漢字で書くと唐種招霊。かっくいー。

バナナのような香りがするというので
嗅いでみましたが、例によって特に何も匂わず、
やはり私の嗅覚がどうかしてるのでしょうな。

そもそもバナナって香るんだっけ?
と思いましたが
そう言えばスケボーで使うワックスが
バナナの匂いだったな と思い出して、
そう言えばあのワックスのバナナのイラストは
ヴェルヴェットアンダーグラウンド&ニコの
ジャケットが元ネタなのかしら と思ったりして、
そう言えば以前フランス人の
女の子が見学に来た時に
femme fataleがスピーカーから流れてて、
「ファムファタールは悪くて魅力的な女の人のことなんですよ」
と教えてくれたことを思い出したりしました。

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今日も粘土を作っていましたが、
ここ最近は午前中に粘土を作って、
夕方以降で器を作るというのが
1日の流れになっています。

今日は荒土を作ってて
荒土は濾過する網目が大きいので
砂が混じる、荒々しい感じの粘土になります。
昔の陶器とかのイメージですかね。

私はきめ細かい土よりも
荒土で器を作る方が好みです。
出来上がりはどちらも
それぞれの良さがありますけどね。


その荒土を作るのに陶器のカメを使ってまして、
漢字で書くと甕、で このカメは昭和の終わり頃に
もうどこの家庭も使わなくなって
在庫処分ということで
島根とか唐津にあるカメの産地から
行商人みたいなのがトラックに積んで持ってきて、
それを一つ1,000円とかで買ったものだそうです。

大きいのはもうちょっと高かったそうですが
それでも安いですよね。


ちなみにこのカメは島根の方がちょっと弱くて
唐津の方が頑丈です。
写真の真ん中2つが唐津で、両端が島根ですね。

なので撹拌器を使うなら唐津の方がいいのですが、
今あるのはほとんど島根のカメばかりなので
ほとんど どこかしら割れてたり
ヒビが入っていたりします。
それでも針金とかで締めてあげれば使えるので、
崩れるギリギリまで働いてもらう所存です。


今ではリサイクルショップや
蚤の市なんかでたまに見かけるので
いい感じで安かったら買いますね。
まあそりゃそうか。
置き場所には困らないし、実用性もあるので
こういうのを残しておくのも
焼き物屋の一つの役割ではないでしょうか。

おれ


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

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