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翼果と高反発スポンジの話

5月16日 くもり

本日のBGM Eddie Palmieri

夜のうちに雨が降っていたみたいで
朝は霧がかった景色になっていました。
庚申窯の上にある池の様子↓

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その池に行く途中の道には
もみじが植えられていて、
赤い葉があるのでなんだろうと
調べてみたところ
この赤いのは もみじの実らしく
翼果(よくか)というそうです。

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翼果は羽状に変化した果物になるそうで
羽に風を受けてなるべく遠くに種を運ぶという
生き残り戦略らしいです。
羽の根元のふくらみが種なんだとか。

いやあ もみじがこんな風な
実をつけるとは知りませんでしたな。
なんか勝手に増えてるんだろうと思ってた、
というか もみじの生殖なんて
気にも留めていませんでしたよ。
改めて観察してみるとそれぞれに
エボリューションしたスタイルがありますね。

ところ変わって こちらは粘土を作る桶の上の猫

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私だったら そこを足場にしようとは
思わないけど、彼らは愛玩動物としての
ライフスタイルを確立したもんだから
身体能力を持て余して わざわざ難度の高い
行動をしたがるのかしら。

あと20万年くらい人間に飼育されたままで
世代を重ねたら「昔の猫は2cmくらいの足場から
ジャンプして反対側に飛び移ってたのよ〜」
なんて身体能力が衰えた代わりに
喋れるようになってたりするかしら。

まあでも20万年は人間には長いですなー
もみじならまだありそうですけどね。

さて今日はテンションの上がらない作業上位の
「高台拭き」というのをやっております。
高台(こうだい)っていうのは食器の裏の
円形の筒みたいなところです。

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釉薬というのはざっくりいうとガラスですので
焼いてる間は溶けて水飴みたいになり、
冷えると固まります。
なので窯の中に器を置いた時に、置いた場所と
器が接してるところに釉薬があると
その場で器がくっついてしまい、取り外すには
ガラス化した釉薬を割るしかないので
キズモノになってしまいます。


それを防ぐために
高台の地面と接する部分a.k.a畳付き
の釉薬をスポンジで拭き取ります。

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このスポンジも特殊なやつで
陶芸ショップで売られてる
高反発でかたいスポンジです。
釉薬を拭き取るのは
このスポンジでなければあきまへん。
それくらい市販のものとは違うのです。
かたいんです。
元に戻るパゥワーが強いんです。
その結果余分なところにスポンジが当たらず
意図したところにだけスポンジが当たるのです。
もうこのスポンジなしの生活は考えられない。。


そんなスポンジに水を含ませて
釉薬を溶かしながら地肌が見えるまで
釉薬を拭き取っていきます。

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この時に畳付きの部分だけではなく、
高台の内側と外側の側面も少しだけ
拭き取っておきます。
釉薬は流れるので、あまりギリギリだと
下とくっついちゃうかもしれないので。

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この辺の細かい拭き取りも
高反発スポンジならではの仕事です。


一つ一つの高台を拭き終わったら
窯の中に釉薬の温度帯を加味しながら
なるべく体積効率よく詰めていって
今回はこんな感じです。

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電気窯なので後は電気を入れるだけですね。
この電気窯はもう限界を超えているので
毎回焼くのが心配なのですが
ひと窯分無駄にするくらいの痛手をこうむれば
新調しようと思い立つかもしれません。
高いんだもの電気窯。
そして寿命が短い。


まあでも電気窯を使わないスタイルでも
かなりいけそう気はしてますね最近。
そうすれば選択肢が減って
作業に迷いがなくなるんじゃないかな。
そして制限があるからこそ
新しい技法が生まれるんじゃないかな!

しかしながら今は電気窯でしか
出せない色があるので、
しばらくはこのボロボロ爺さんと
付き合っていきたいと思います。

今回の窯出しは3日後くらいになるでしょうね。
うまく焼けてくれますように。
うまく焼けていない場合でも
その分精神的な鍛錬にはなります。
精神的なもんはいいから実利をおくれ。

おれ


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

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