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釉薬と吉右衛門窯の話

4月21日 くもりのち晴れ

本日のBGM Mel Tormé

今日は釉薬をかけといた器が
ある程度たまったので窯詰めを。

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これは電気窯で、
設定した温度と時間で
自動的に焼いてくれる便利な窯なのですが、
実は電気窯でも内部の温度は一定ではなくて、
一番下の段が一番温度が低く、
真ん中より上くらいが一番温度が高くなり、
一番上は下ほどではないけど温度が低いという
温度分布になっています。

そいで釉薬にはそれぞれ融点(ゆうてん:物質が液体になる温度)
というものがございまして、
例えばワラの灰を用いたワラ白釉は
高温じゃないと溶けなくて、
一方酸化鉄を用いた鉄赤釉は高温になると
溶けすぎて棚板とくっついて失敗作になる、
という具合に色によって溶ける温度が違います。

なのでこの窯の中の配置も
ワラ白なら真ん中上のあたり、
鉄赤なら一番下、
という風にそれぞれがちょうど良い温度のところへ
置いていきます。
これが窯詰めですね。

なのでなので
もしワラ白ばかりで焼いてしまうと
下の段の器はいい色にならなかったり、
鉄赤ばかりで焼いてしまうと
上の方はすべて失敗作になるので、
それぞれ融点の異なる器が程よく揃っていないと
窯詰めすることができません。

そいでそいで
窯の中の写真で分かる通り、
大きい器ほど場所をとります。
窯を焚くのに燃料費や電気代がかかりますし、
窯の耐用年数もあるので(この電気窯は完全にオーバーしていますが)
一回の窯焚きでは なるべくたくさん品物を入れた方がお得!
つまりでかい器は場所をとりすぎてあまり入らない!
つまりつまり高い!!
ということになるんですね。
大きいものは高くなるという陶器の事情でした。
他にも理由はあるけどね。


さて、昼ごろ粘土作りをしていると
過剰にありすぎる物たちを
整理していた祖母から声をかけられ、
吉右衛門窯の作品が出てきたとのこと。

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これは我が家の親戚の人が
先代の吉右衛門さんと懇意だったので
もっていたものです。
先代の吉右衛門さんの作品は結構好きで、
形と釉薬が上品だと思います。

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この貫入が細かいのはおそらく
天然の灰を使ったもので、
ほんのり土色な透明釉です。
貫入が細かいのってのは好きですね。

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こっちの透明釉も、絵の呉須(ごす:コバルトのこと)
が溶け出してる分もありますが、
透明釉だけでもほんのりと青みがかっており、
透明釉がきれいなのはとてもいいですね。
釉薬として安定してるから使いやすいし、
応用が効きまくるので。
上と下の器を見比べても、
素材の木の種類によって、
透明具合がかなり変わるのが分かります。

あとはうちで長いこと使っていた
緑青流し(ろくしょうながし)の器も
祖母の手により発掘されました。

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こちらも緑青が洗われて
大変綺麗な色になっていますね。
緑青流しに関しては、買った時よりも
何年も使ったものの方が綺麗になります。
なので買いましょう。
そしてたくさん使いましょう。
でも割れるかもしれない。
そのためにたくさんストックで持っとくといいんじゃないかなあ!
いっぱい買ったらいいんじゃないかなあ!

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とは言ったものの現在くろつる屋には
緑青流しの品が一つも出ていませんでした。
今度いい感じに綺麗になるやつを
出品させていただきます。
その際はぜひ見てください。

おれ


高鶴裕太 コウヅルユウタ
陶芸家
1991年生まれ
2013年横浜国立大学経済学部卒業
上野焼窯元 庚申窯3代目

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