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一発だけの打ち上げ花火

 中学校に入って初めての夏休みが始まった。部活で忙しく夏休みらしいことなど何もしていない。特にこの夏は祭りや花火などすら無縁の生活をしていた少し寂しい夏であった。

 私は常々疑問に思っていた事が一つあった。それは生命の誕生についてである。昔おじいちゃんに子供の作り方を聞いた事があった。おじいちゃんは頬をそめながら「コウノトリ」とだけ発する。サンタと同等の謎ができた。
 少し時間はたち下の毛が心もとなく生えてきた頃私は知った。性行為についてである。世の中の心理に知ったような気でいた私であったが世の中はそう甘くない。ここで一つ新たな疑問が生まれた。あの白い液体は何だ。どの動画や書物を見ても必ず最後に白い液体がでている。ここで私は一つ仮定をした。演出上、事の終了を分かりやすくするための制作者側の共通認識ではなかろうかと。

 時は戻り夏の熱さが猛威を奮う8月。
 私は今日用事がある。親戚がおばあちゃんの家に集まりに来るのだ。コンビニ程の距離でしかない私の家であったため少しゆっくりと出かけの支度をしていた。家族は元の用事がある為先に家を出ている。私はいつものように家に1人だけの時にできるささやかな動画鑑賞に油を売っりはじめた。普段は立つだけでその先を知らなかった私はそれだけで満足をして鑑賞に浸っていた。だがこの日は違う。無意識に血が上り過ぎて少し痛くなった自身の位置を変える。その時破裂しそうな痛みと多少の爽快感が私を振り向かせる。音痴なテンポでそれを繰り返す。何やら不思議な感覚だ。初めての感覚に動画よりもそちらに意識を向けてしまう。すると何やら私の殻を破りそうな勢で・・・。

 衝撃に自身の病気を心配する私。親戚の会話など頭に入らぬまま、窓からちらつく月を見上げ布団に入る。当然寝れる訳もなく私はもう一度確認のためにパンツを下ろす。
 やっぱりだ、死を覚悟する私にある記憶がよぎる。今までそうだと確信していたため考えもしなかった動画での白い液体。死を覚悟し、性の知識に救われ生を実感した私。
 
 次の日も部活で忙しくなるためその日私はもう一発白い花火を上げて成長の狼煙を上げた。
 

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