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想い違いの初ドライブ

 初のドライブ。選んだのは親友の女の子。現彼氏との仲を繋いだほどの親友。
 私達はよく二人で遊ぶ。少し前まで泊まりで旅行に行くほどの仲であった。
 今日いつもと違う事は風を肌で感じるバイクではなく、暖かく包まれ小気味よい音楽の流れる車内であるということ。少し危なげな運転に安堵を繰り返し目的地へとたどり着く。
 冷たいアイスで喉を震わせた。車内との気温差に体内に残るアイスの温度が喉を通る際に居場所を知らせる。

 2人の間にできた往復する言葉に埋められた心の落差。最近私達はよく言い合いになる。今まで受け入れられてきた互いの違いが今となっては互いの欠点として認識いている自分達だ。コーンのように丸みをおびていた私達の男女の友情は、彼氏という抗えない甘い物体に染み込まれ、脆くなっていた。
 それでいても友情を信じる私に彼女は心の現実をつきつける。

 おぼつかない運転から無意識にハンドルを傾けだした頃私は当たり前を知る。いや、当たり前と思い込みたいことがある。彼氏ができた女の子に例え男女の友情であろうと割いる事はできないのだと。私なりに彼女を受け入れてきた現実を否定しまいとする本能が脳をそう認識させる。
 信頼が踏み込ませていたアクセルを今はどこか道端ですれ違った人を乗せるような不安のない運転に変わる。
 今日はそんな日。そう思うため、悪化していく2人の中の現実を過去の思い出の貯金で切り崩す。そろそろ残高も尽きかけている。

 彼女を家に送り1人夜の帰り道。借りる事のできない揺るがない関係。それがまだいつ途切れるかの分からない友達だった事に目を背け、楽しみで溢れていた彼女への行きの道を背にして家に帰る。

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