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過信からの傷心

 私はプライドが高い。それを自覚したとあるきっかけがある。

 夏休みも始まりひと夏の冒険に心震わせていた頃、私にはパートナーなる女性がいた。彼女はよく笑い、よく話し、そしてよく涙する人だった。そんなあどけなく人間味に満ちた初めての彼女を持つことができる日々に充実感を感じていた時である。恋人としてノルマをこなしていく内にとうとう来てしまった大人の扉へのノック。だが私に焦りなど毛頭ない。幼い頃からこの日の為の努力と研究を惜しまなかった私であるためだ。むしろ、努力と練習の成果を発表する答え合わせの時間とすら思えている。

 等々電話をしてる時彼女からの承諾を得た。それは時計の針が北を過ぎた夜の事。阿炎狂乱の内心を抑え込みここはクールに返事をする。「そんな事をするために付き合ったわけじゃないから怖くなったらすぐに言って」嘘である。15歳の性欲に理性など勝るはずがない。その後の会話など覚えているはずもなく朝目が開くと同時に夜の準備を進める。

 少し離れた薬局に来た。理由はゴムを買うところを知り合いに見られないようにするためである。店内を見渡し知人が居ない事を確認。安心して装備を整えることができる。手始めにフリスクを買う。普段はしない気遣いであるが私に体を預けてくれる彼女に不快な思いなどさしたくはない。そこから粉臭い化粧品の岐路をたどり等々目的地であるコンドーム売り場へと辿り着いた。そこで私は驚愕する。
種類が多すぎる。 あまりの多さに選択回避の法則に直面した。だがここで逃げるわけにはいかない。多数の選択肢の中私は考える。まず条件を考え絞り込を行うことにした。1つ目に考慮すべきことは厚さであるこれは無難に0.03ミリで間違いないだろう次にサイズだ。ゴムにサイズが分けられている事など初めて知った私は悩みに悩みある事を思いだした。昔自分のイチモツの全力時に計測した事がある。あえてサイズは言わないが、周りと比べ多少の大きさに自信はあった。(あとに後悔するがその計測時に皮膚にのめり込むほど強く物差しを押し込んでいた事を忘れていた。)多少プライドの高い私は迷わず象がプリントされたいかにも力強く男らしいこのゴムに決めたのである。

 迎える本番。不慣れなキスで前歯の当たる音だけが響く空間。乱れた呼吸の中で先に進もうと暗闇の中手を伸ばす。知識は豊富だが経験不足の私にとってそこは絵本の中でしか観たことのない様な世界なのである。少しカッコを付けようと片手でホックを外そうとしてみるものの掴んでいたのは相手の毛先であった。小馬鹿に笑い彼女を見るとやはり彼女も緊張を隠しきれない顔立ちである。そこに多少の背徳感が莫大な性欲のストッパーを外した。我を忘れ等々成人の儀を行う時が来た。準備は万全袋からゴムを取り出す。
 空気を壊さぬよう時間をかけぬとするプレッシャーがゴムの裏表の特定に翻弄させる。
いきり立った私のsonにそっと上着を着せた。なぜだ、私はオーバーサイズを買ってしまったようである。血の上った息子はまるでダボタボのパーカーを着させられているようであった。自分と自身を見つめる目線を上に上げることはできない。期待と不安で待機させられている彼女の顔がそこにあるからだ。

 夜は明けた。抜け殻となった私に彼女は掛ける言葉を探しているようである。気を遣わせて申し訳なく思うと同時に自身の過信が招いた実態に切腹の思いだ。
 その夜私は1人いつもより少し早く果てた。


 
 


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