ご家族には「本当にお気遣いなく」と言いながらも頂いた手土産を開ける瞬間はテンションが爆上がりします。#あんこだった時は爆下がりです

こんにちは、コッシーです。

さて、うちの入居者の中には携帯電話をお持ちの方が何名かいらっしゃいます。そのほとんどの方の携帯に施設の電話番号と一緒に僕の携帯番号を登録しています。

目的は外出先で何かあった時に、携帯電話に着信履歴を残すことで入居者の携帯を見てくださった方にこちらへ連絡をしてもらうためです。もちろん僕に電話をくださっても良いのですが、当たり前ですが施設内で直接会うことが出来るので、ほとんどかかってくることはありません。

しかしHさんという男性の入居者だけは別で、時々僕に電話をかけてこられます。

早朝かけてこられては、「今日はデイサービスの日やったか？」と聞かれたり、お昼頃かけてこられては、「お昼ご飯は食べたかな？」と聞かれたりします。

そんなに頻回ではないため、特に止めるよう促してはいませんし、その都度応えるようにしています。

ちなみにHさんの携帯には短縮ダイヤルボタンが３つありまして、①が長男②が僕③が次男でなぜか僕の番号が次男さんよりも上にきており、スタッフからはH家の1.5男と言われています。#どういう産まれ方だよ

先日の夜、そんなHさんからちょっと物騒な電話をもらいました。

「あーもしもしHです。わしの部屋にあったつまようじが見当たりません。１本ではなくゴッソリ無くなっております。この建物にはどうやら泥棒がおるようです。」

ど、泥棒だと…

うちの施設で泥棒が出てたとなると一大事ですが、実はHさんは軽度の認知症を患っておりよく物忘れをされます。

金品ならまだしもそもそもつまようじを盗むような杞憂な方はいないと思うので、Hさんの勘違いの可能性が高いと思われます。

しかし、「泥棒がおる！」と息巻いている人に「いやあなたの勘違いだよ」と言ってもおいそれと納得するとは思えません。

「今日はもう遅いから明日お部屋を確認しますね」

そう伝え電話を切りました。次の日、Hさんに確認する前によくHさんの部屋の掃除をしているスタッフにHさんとの電話の内容を伝えました。

「あれ？つまようじなら多分枕元に置いてましたよ。寝ながらやりたいって言ってたような気がします。」

ほうほう、だいぶ事件の輪郭が見えてきましたよ。

おそらくHさんはつまようじを枕元へ移動したことを忘れてしまったようです。いざつまようじを使おうとした時には当然いつもの場所につまようじは見当たりません。

普通なら「そういえば枕元に移動したんだった」と気付くと思いますが、物忘れのある高齢者では移動した出来事自体を忘れてしまっている可能性があるため、なかなかそこには結び付きません。

定位置付近を探しても見当たらず（枕元にあるからね！）、焦ったHさんは僕に電話をかけてきたというシナリオだと思います。

だとすれば、事件解決はそれほど難しくはなさそうです。早速名探偵コッシーが動きました。食堂に来たHさんに声をかけます。

「Hさん、昨日言ってたつまようじは見つかったかな？」

「つまようじ…？ああ！そうだった！いやどこにも見当たらんのですよ！盗まれたんですよ！」

「とりあえずご飯を食べてから一緒に探してみましょう」

「見つからんと思いますがね…」

完全に泥棒の仕業と思っているHさんと一緒にお部屋に行きました。お部屋に戻るとすぐにHさんはトイレに行きました。その隙にベッドの枕元を確認しました。

枕をどけるとそこにはやっぱりちゃんとつまようじがありました。これをそのままHさんに伝えても、もし枕元に移動したことを覚えていなかったら今度は「誰かが部屋に入って移動させた」と言われかねません。

入居者を騙すのは少し心苦しいですが、枕の下にあるつまようじをHさんに見つからないように手に持ち、定位置だった付近に置き適当なタオルで隠しました。

「つまようじはどこに置いてあったの？」

「その辺りだが、全く見当たらんのだ。誰か盗んだに違いない」

「この辺りね、どれどれ…あれ？これは違う？」

「んん？な！これだ！これじゃよ！あったのか！盗まれてなかったのか！すごいなコッシーさん！さすがコッシーさんじゃ！」

「これからは泥棒を疑う前に一回聞いてね」

「うむ、そうしますわ！」

今回の事件も（？）、名探偵コッシーの活躍で無事解決となりました。

つまようじが見つかって気を良くしたHさんは、その後息子さんから送られてきたチョコレートを事務所に持ってきてくれて「皆さんで食べてくだされ」と言われ置いてかれました。

Hさんからいただいたチョコレートはみんなで美味しくいただきました。これにて一件落着です。

ただその日の夜にHさんから再び電話がありました。

「あったはずのチョコレートが無くなった！ここには泥棒がいる！」

だそうです（苦笑）。

どうやらまた名探偵コッシーの出番のようです。

現場からは以上です。それではまた。

コッシー