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クロモリフォークのコラム換装(アヘッド化)と3連ネジ穴の追加@柳サイクル

普段の足に使っている1980年代のクロモリ自転車のフォーク周りを改造してもらいました。作業内容は、いわゆる「アヘッド化」とフォーク脚への3連ネジ穴の追加です。セッティングや整備が楽になり、積載の選択肢が増えました。

アヘッド化

「アヘッド化」というのは、自転車のステアリング軸であるパイプ=フォークコラムと軸受一式=ヘッドセットをネジ切りタイプのものからネジ無しタイプのものに交換することです。ヘッドセット内のベアリングにかかる圧を適正に保つのにヘッドセット上部の二つのナットを用いるのがネジ切りタイプで、外側にネジが切られた(threaded)コラムの先端に上側のナットが被さり、ハンドルバーを支えるステムはコラムの内側に挿し込みます(クイルステム)。ネジ無しタイプでは、ネジの無い(threadless)コラムがヘッドセットを貫通し、それを外側から包むステムがベアリングにかかる圧を保持する形になります(調整機構は別)。現在スタンダードになっているネジ無しヘッドセット機構の元祖とされているのは、1990年頃にJohn Raderが軽量化を狙って考案した "Light Set" です。これがDia Compe USAへの独占ライセンスと共に改名され "AheadSet" となったそう。時代に先んじた、という意味での「アヘッド」ですね。

自分の場合、アヘッド化の主目的はベアリングの調整やステムの交換を容易にすることでした。前掲のAheadSet誕生の記事にも書かれていることですが、ネジ切りヘッドセットは悪路で緩み易く、調整には大きな工具が必要になります。日常の移動に使っていて身体とのシンクロ度の高いMiyata Le Mans Sportifを砂利道も躊躇せず走るツーリングに連れ出したい、と思っていたので、相対的に緩みにくく、もし緩んでも一般的な携帯ツールで簡単に調整できるアヘッドセットへの換装は魅力でした。また、アヘッドセット用のステムは概して交換が楽です。ハンドルバーを保持するクランプ部が分解できる構造になっている製品が多いので、長さや角度の異なるステムをあれこれ試してセッティングを詰めていくような場合に、いちいちバー側の他の部品を外し、後から元通りの位置に取り付け直す苦労もありません。バークランプ部のネジの数も、クイルステムでは1本が主流なのに対してアヘッド用ステムでは2本または4本が普通で、負担が分散されている安心感があります。システム全体としては軽量化や高剛性化といったメリットもあります。

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アヘッド化というとフォーク側は丸ごと交換するのがたぶん一般的ですが、自分はコラム換装という改造を柳サイクルのビルダーである飯泉さんに依頼しました。これはLe Mans Sportifのフォークがちょっと特殊だからです。まず、オフセット(コラム中心から前輪軸中心までの距離)がかなり多め。そしてセンタープルという種類の制動装置の台座がついています。コラム外径は大抵のネジ切りタイプと同じ1インチですが、ネジ無し1インチコラムというそもそもマイナーなフォーク(ネジ無しコラムは「オーバーサイズ」と呼ばれる外径9/8インチ≒28.6mmが普通)の中からオフセット値が等しくセンタープル台座のあるものを探し出さなければポン付け交換は成立しません。これは蓬莱の玉の枝を見つけるような無理難題ですので、職人の技術を頼ることにしたわけです。結果、バッチリ仕上がりました。

3連ネジ穴の追加

フォークの両側の脚には荷物の積載に役立つ3連のネジ穴を追加してもらいました。脚の根元から先端にかけての湾曲が大きくても、64mmの間隔(標準値)をとって直線上に3つ穴を並べられるんですね。飯泉さんの経験と知見によれば強度的にも問題なし。全体の上下位置は、真ん中のネジ穴を使ってTubusのパニアバッグ用ラックTaraが綺麗に組めるよう考えて決めました。

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フォーク脇へのスタッフサック等の積載については、他の車体でアダプターとAnything Cage HDを用いた経験があります。ただ、素の状態のフォークにアダプターを取り付けてからcageをネジ留めするのはセットアップに時間がかかりますし、頑張ってカチッと組めたとしても、外側への張り出しが大きくなり美しくありません。フォーク自体に3連のビス穴が備わっていると、作業性・安定感・見た目の全ての点でパッキングの質が上がります。

ツーリングに行きたい

今回の改造で何よりワクワクするのは、やはり3連ネジ穴の追加ですね。ステアリング周りのアヘッド化によるステム交換の簡便化は、最近ちょこちょこコックピットセッティングをいじっているので実感できています。緩みにくいとか剛性が上がったとかは、近場でも継続的に乗っていれば分かることかと思います。しかしフロントフォーク脇への荷物の積載は、自分の場合、野営を伴うツーリングが前提になってきます。自転車を眺めていると、オリオンの三連星のようなネジ穴が「キャンプツーリングに行こうよ」と誘いかけてくるのです。

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注記: 2020年の自転車遠足について

キャンプ道具を自転車に積んで、山や海へ遠足に出かけたい。これは率直で切実な気持ちです。でも、COVID-19を抑え込む必要がある今、人との無用な接触を増やすわけにはいきません。野に寝起きする類のツーリングは、ほぼ完全にスタンドアローンでなければならないでしょう。道中で補給をしなくてよいように食料や水をたっぷり積んだとしても、怪我や事故のリスクは生活圏に留まっているよりもコントロールが難しくなります。自己完結のレベルと性質が、通常の単独行とは大きく違ってくるわけです。その実践の可否と、それが自分にとって幸福な体験であるかどうかを、まずはじっくり考えてみたいと思っています。日々、生活圏の冒険を楽しみながら。

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