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2019/8/30(金)の夜に、池袋へ足を運んだ方が良かった理由。

「スゴい。スゴすぎる……。」
品のない、身も蓋もないのですが、リハーサルを取材した感想はこれに尽きます。

大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ロックの歴史における「ウッドストック・フェスティバル(1969)」、日本語ラップの歴史における「さんピンCAMP(1996)」のような、シンフォニックジャズの歴史に間違いなく刻まれるであろう、この新しいコンサートシリーズの第1回を聴き逃さない方がいいですよ。マジで……。

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ニューズウィーク日本版で「世界が尊敬する日本人100」に選ばれるなど、国内外で称賛を集めるジャズ作曲家 挾間美帆(はざま みほ)。

ジャズは勿論のこと、坂本龍一、鷺巣詩郎、五木ひろし(!?)など、第一線で活躍する多様なミュージシャンから信頼の厚いオーケストレーター、アレンジャーとしても既に業界では名高い存在なのです。ジャンルを問わず、この年代で最も世界的に注目を集めている日本人音楽家であることは間違いないでしょう。ご存知なかった方は、これを機に、是非お名前を覚えていただければと思います。

そんな彼女が、いま「真剣勝負」で一番力を注いでいるのが、シンフォニックジャズという分野。ガーシュウィンの《ラプソディー・イン・ブルー》に代表されるような、オーケストラで演奏されるジャズで、なおかつクラシックとジャズ双方のいいとこ取りをしたジャンルともいえます。

そしてミュージカルなどの、アメリカのショービズ(ショービジネス)的な要素も強いため、ジャズやクラシックに詳しくなくても、誰が聴いても楽しい作品が多いのもシンフォニックジャズの特徴。例えば、こんな感じ!

どこかで聴いたことがあるであろう「アイ・ガット・リズム」の旋律が中心となって、底抜けに楽しくて、かつセクシーな音楽。こんな音楽などを集めた、挾間さんプロデュースの公演が8月30日(金)の夜に開かれます。 今回を逃すと、まず生演奏では聴けないような作品も多いので、必聴の公演なのです!

特に貴重で、挾間さん自身も強い思い入れをもっているのが、クラウス・オガーマン作曲の《シンフォニック・ダンス》という作品。

ボサノヴァのトム・ジョビンやジョアン・ジルベルトのアレンジャーとしても知られるオガーマンですが、自作のシンフォニックジャズでは、ドビュッシーやラヴェルといったフランス印象派のような色彩感で、魅了してくれます。これこそまさに、今回を逃すとまず生演奏では聴けないであろう楽曲の筆頭格です。

他にも美麗なヴィンス・メンドーサの《インプロンプチュ》など、知識がなくても聴けば一瞬で魅せられるようなシンフォニックジャズがコンサートの前半に演奏されます。

一方、後半ではゲストに今をときめく人気ジャズピアニストのシャイ・マエストロが登場。

柔和な笑顔からは、彼の人の良さも滲み出ていますが、インテリジェンスも感じられませんか? 1987年生まれとまだ若いのですが、「知・情・意」すべてを兼ね備えた最高のジャズピアニストのひとりといって間違い有りません。

後半はまず、挾間さんがシンフォニックジャズにアレンジしたシャイ作曲の《ザ・フォーガットン・ヴィレッジ》と《ザ・ストーン・スキッパー》を、シャイ自身のピアノとオーケストラで演奏。そのまま聴いても素敵なのですが、事前に原曲を聴いておかれると、どんな変貌を遂げたのか、更にお楽しみいただけるはず。

そして、メインプログラムには挾間美帆さん書き下ろしの《ピアノ協奏曲第1番》が世界初演されます。ソリストはもちろんシャイ・マエストロ! どんな楽曲に仕上がっているのか、リハーサルの模様が公開されていたので是非聴いてみてください。

上記、挾間さんのインスタに投稿されているのは、第1楽章のメインテーマにあたる部分(正確には再現部的な部分の演奏なのですが)。壮大かつキャッチーな作品であることがお分かりいただけるはず。

そしてシャイのあげた動画は第1楽章のハイライト集([>]マークをクリックもしくはスワイプすると他のクリップも聴けます)。キャッチーなだけじゃなく、しっかりと聴きごたえのある協奏曲であることが、伝わってくるはずかと。

このあとに続く第2楽章では、泣く子も黙る名曲中の名曲ラヴェルのピアノ協奏曲 第2楽章と、オガーマンの色彩感を併せ持つ音楽が続き、最後の第3楽章はゲーム音楽のラスボス感のある、緊張感が高くてめちゃくちゃ格好良い音楽となります。しかもラフマニノフ(特に協奏曲第4番!)のような甘美な旋律がクライマックスで鳴り響く……となれば、もう名曲確定です。

今後、ジャズピアニストだけでなく、クラシックのピアニストもレパートリーに加えていくであろう挾間美帆による新世代のピアノ協奏曲。この世界初演を聴き逃がすのはあまりに勿体ないですよ。加えて、実はアンコールにもスペシャルな演目が準備されております(曲目は、もちろん聴いてみてのお楽しみ!)。急いで帰らずに、最後までゆっくりとお楽しみいただきたい内容なのです。

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もちろん、演奏自体も実に素晴らしい。まさに「役者が揃っている」公演でもあるんです。

挾間さんご指名で起用された、指揮者の原田慶太楼さんは日本生まれで、アメリカで研鑽を積んだ未来の巨匠。高校時代は吹奏楽の神様のひとり、指揮者フレデリック・フェネルに師事し、その後もマイケル・ティルソン・トーマス、オリバー・ナッセン、ヘルベルト・ブロムシュテットといった名指揮者たちの薫陶を受けてきた期待の星なんです。

その指揮ぶりとリハーサルの進行は、とにかく無駄がなくて非常に的確。時間を効率よく使いつつも、こだわるところは徹底的にこだわる。オーケストラにとっても馴染みがない曲目が多いのに、オーケストラを不安にさせない。上から目線でもなく、下から媚びるでもなく、平等な音楽家同士として、良い音楽、良い公演を実現するため、フラットな関係でリハーサルをさばいていく様には感服するほかありません。

ジャズや、ビッグバンドのサウンド、リズム感にも造詣が深いため、原田さんの指揮するオーケストラは野暮ったいサウンド、リズムを鳴らしません。だからゴリゴリのジャズファンでも安心してお楽しみいただけるんです。

そして、その原田さんを支えるのがオーケストラ(東京フィルハーモニー交響楽団)のリーダーにあたるコンサートマスター(通称コンマス)です。今回の公演では、2015年まで長きにわたって東京フィルのコンマスを務めていた荒井英治さんがゲストとして古巣に帰還。荒井さんといえば、プログレの名曲を弦楽四重奏でカバーするモルゴーア・クァルテットのメンバー(第1ヴァイオリン)としても知られています。

クラシックにはないリズム感や、ノイジーな音色などでも完璧に弾きこなしてしまうヴァイオリニスト。リハーサルでも率先して音楽づくりにかかわり、他の弦楽器の楽団員に指示を飛ばしつつ、原田マエストロをサポート。弦楽器がモタれることなく、グルーヴ感をうみだしてゆきます。

もちろん、他の東京フィルハーモニー交響楽団の楽団員の皆さまも非常に熱心。既に何度も本番をこなしてきた、気心知れた挾間さんということもあるのでしょう。休憩中には「格好いい!」「凄い!」とか新曲の熱い感想を伝えたり、どうすればより良い演奏になるのか、どんどん質問に来たりしておりました。挾間さん自身がツイートで「#東フィルの暖かさと真剣さ #こんな気持ちにさせてくれるオケはそう無い」と書かれているのも納得です。

2019/8/30(金)の夜に、池袋へ足を運んだ方が良い理由……もう伝わりましたよね? これだけの要素が全て見事に噛み合ったコンサートなんて、そうそうありません。ご都合あう限り、是非とも池袋駅から直結の東京芸術劇場にお越しください。当日券でも、今のところは間に合います!

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NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇

https://www.geigeki.jp/performance/concert183/

日程]2019年08月30日 (金)19:00 開演(ロビー開場18:00)
 ※18:40から挾間美帆によるプレトークを開催

会場]東京芸術劇場 コンサートホール(東京・池袋)

曲目
・ジョージ・ガーシュウィン/『ガール・クレージー』序曲
・クラウス・オガーマン/『シンフォニック・ダンス』から第1楽章、第3楽章
・ヴィンス・メンドーサ/インプロンプチュ
・レナード・バーンスタイン/『オン・ザ・タウン』から「3つのダンス・エピソード」
~休憩~
・シャイ・マエストロ(挾間美帆編曲)/ザ・フォーガットン・ヴィレッジ*
・シャイ・マエストロ(挾間美帆編曲)/ザ・ストーン・スキッパー*
・挾間美帆/ピアノ協奏曲第1番*(東京芸術劇場委嘱作品・世界初演)

出演
 構成・作編曲・プレトーク:挾間美帆
 指揮:原田慶太楼
 ピアノ:シャイ・マエストロ*
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

チケット料金]※全席指定・税込
 S席 8,000円/A席 6,500円/B席 5,000円/高校生以下 1,000円
 ※未就学児入場不可。
 ※高校生以下チケットは、東京芸術劇場ボックスオフィスのみ取扱い。(枚数限定・要証明書)

東京芸術劇場ボックスオフィス
電話:0570-010-296(休館日を除く10:00~19:00)
 ※一部携帯電話、PHS、IP電話からは、ご利用いただけません。
窓口:営業時間…休館日を除く10:00~19:00
WEB:http://www.geigeki.jp/t/
 ※24時間受付(メンテナンスの時間を除く)

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