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平凡な私がホストになった話①~体験入店~

私は大学4年の夏の間だけ、歌舞伎町のホストクラブで働いていた。この経験から多くのことを学んだので、忘れないうちに文字として残そうと思う。5回くらいに分けようかな。


最寄り駅でのスカウト


大学の研究室からの帰宅途中、21.5インチのモニターを小脇に抱え自宅の最寄り駅から家に向かって歩いていたら、「お兄さん。ホストとか興味ありませんか?」とホストのスカウトを受けた。

研究室からの帰りのため、キレイな恰好もしてないし、片腕にはモニターは抱えてるというやばい状態。それにも関わらず、最寄り駅でスカウトされるなんて、私はどれだけダイヤの原石なんだと思い、スカウトの話だけ聞いて鼻息荒く帰宅した。

どんな人がスカウトされるか

最寄り駅でスカウトされたことに驚き、どんな人がホストのスカウトをされるのかインターネットで調べたところ

  • 無職で暇そうな人

  • 上京したてで垢抜けてない人

  • 簡単に付いて来そうなバカ

などと、ひどい言われようであった。私はダイヤの原石どころか「無職で垢抜けていないバカ」に見られていたらしい。

体験入店

スカウトされたホストクラブの店舗は歌舞伎町にあった。私は働く気は一切無かったが、興味本位で体験入店に行った。体験入店とは、文字通り店のスタッフとして一日だけ勤務することである。縮めて体入(たいにゅう)という。この体入で、私は数々の衝撃を受けた。

体入での衝撃①~非日常の空間~

お店に入って初めに思ったことは、「キラキラしててすごい」だった。シャンデリアが店内を照らし、黒い大理石のような机が並べられ、その周りには革のソファーが配置されていた。お店の人に席で待ってるよう指示され、店内の内装を眺めていたら、キレイな恰好をした男たちが「いらっしゃいませ」と笑顔でひとりひとり話しかけてきた。その状況に圧倒されそうだったが、得意の会釈だけで乗り越えた。

体入での衝撃②~いきなりの接客~

しばらく席に座っていると、説明係の人が来て簡単な手続きと最低限の所作を教えてくれた。

最低限の所作とは、お客様の席に着くときに片膝をつき、自分のグラスを高く上げ、大きな声で「失礼します!」と言ってから席に着く。席に着いているときは、姿勢よく座る。席を離れるときは、同様の姿勢で元気よく「あざした!(ありがとうございました)」と言ってから席を離れる。

この最低限の所作を教わったのち、「じゃあ、○○と一緒に席回ってみようか」と言われ、他の先輩ホストと一緒にお客様のテーブルに行くよう指示された。私はあまりにも急な試練に、少しパニックになりながらテーブルに向かった。

体入での衝撃③~ベテランホストの会話力~

席の配置は、ソファ側に姫(お客様)、その隣に王子(姫に指名されているホスト)、テーブルを挟んで通路側にヘルプ(私と先輩ホスト)だった。王子はホスト歴2年のベテランホストで、話がとにかく面白かった。しばらく4人で当たり障りのない会話をしていると、突然ヘルプの先輩ホストが「その髪は何回ブリーチしたの?80回?(笑)」と私に質問をした。当時、私はブリーチを4回して金を超えて白みたいな髪型をしていたので、突っ込まれるだろうとは思っていたが、「80回?」という質問にはどう反応していいか分からなかった。「そんなわけないじゃないですか~。4回ですよ~」という最高に面白くない回答をしてしまい「やってしまった。楽しい空気がぶち壊れる」と自分で思ったが、私のクソつまんな回答をかき消す勢いで「80回ってブリーチで髪洗ってんじゃねえか」と王子が言ってくれた。テーブルの皆は大笑いしていたが、私はその言葉に感動してしまい、笑うどころではなかった。

この人みたいに面白い会話がしたい。一緒に話していて楽しいと思える人に私もなりたいと思い、このおもしろホストがいる店舗で働き、会話の技術を盗もうと決意した。

代表との食事

体入を終え、店の代表の人に今後働くか聞かれたが、私は一旦保留と返答した。というのも、週5日勤務を条件にされており、卒業研究やWebアプリ開発のバイトもしていたので、働けても週2日くらいだと思っていた。代表は「じゃあ今度ご飯でも行って、ゆっくり話そう」と言い。後日二人で食事をした。

代表との食事では、とにかく褒めちぎられ、一緒に働きたいという熱い思いを伝えられた。ホストは相手に気分良くさせるプロだから信じちゃだめだと思っていたが、気づいたら、週5日のレギュラーメンバーとして働くことが決定していた。やはりホストの話術はすごい。最初の1ヶ月だけ週5日だが、2ヶ月目から出勤日を調節するとは言っていたので、なんとかして1ヶ月乗り越えようと思った。

さいごに

最寄り駅で声を掛けられた無職顔の大学生は、ホストの会話力に感銘を受けてホストになった。こうして、昼は大学、夜はホスト、朝方までアプリ開発という超ハードスケジュールの生活が始まった。ちなみに、ホスト2ヶ月目以降も出勤日が減らされることはなかった。

次は、ホスト一日目の話を書こうかな。

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