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建築家とのめぐりあわせを考えた「馬頭広重美術館」

建築家、隈研吾が「栃木三部作」と称する建築の一つ「那珂川町馬頭広重美術館」に久しぶりに行ってきました。隈自身も著書『建築家、走る』のなかで「馬頭は栃木県の中でも非常に行きづらい場所」と書いていますが、東北新幹線の宇都宮駅や那須塩原駅からバスがなく、どちらからも車で1時間ほどかかります。
 
隈は東京世田谷で1991年に完成した作品が批判され、バブル崩壊とともに東京での仕事をなくします。栃木三部作はいずれもこの時期の仕事で、これらによって「材料の本当の面白さに気が付いた」と語っています。馬頭広重美術館は裏山で採れた杉、隣町烏山の和紙、三部作の一つ「石の美術館」の芦野石が使われています。
 
美術館や図書館などは、建築家の評価を高める絶好の舞台ではあるものの、馬頭広重美術館は都市に建てられる建築と比べて規模が小さく、交通の便もよくありません。予算が少なく、時間もかかる町立美術館のコンペに隈が手をあげたのも、彼を取り巻く環境や関心の向き先が合致した、タイミングが合ったということなのでしょう。
 
11月27日まで、歌川豊国や国貞(三代目豊国)などの役者絵と、歌舞伎座が収蔵する衣装や小道具、道具帳(舞台の装置図)を展示する特別展「ざ・歌舞伎座」が開催されています。隈は2013年に完成した「歌舞伎座の平成における建て替え」(第5代歌舞伎座)を手掛けています。馬頭広重美術館においては、建物の完成をもって建築家としての仕事は終わりましたが、新たな作品から新しい縁が生まれていることを特別展から感じました。
 
隈が広重の画で一番好きだという「大はしあたけの夕立」。
直線で描かれる雨の向こうに見える風景の重なりを「木の格子の重層で表現」したと言います。

那珂川町馬頭広重美術館
杉の格子(ルーバー)のエントランス
光を通すスケスケの屋根


那珂川町馬頭広重美術館
宇都宮線氏家駅と西那須野駅、烏山線烏山駅からバスが出ています。
烏山線は蓄電池駆動電車(ACCUM)です。
 
<参考>
隈研吾『建築家、走る』新潮社、2013年

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