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ルート1(3)の寄り道・吸血鬼(Vampyre)/ジョン・ポリドリ

ルート1(3)の「ドラキュラ」からの寄り道として、「ドラキュラ」に先んじて書かれたポリドリ「吸血鬼」についてちょっと書きます。
「ドラキュラ」を読んで当作を知りましたので、本来ならルート入りするところですが、それは「カーミラ」に譲るとして今回は少し短めに。

さて

近代ヨーロッパにおける吸血鬼をテーマにした最初の小説は、ジョン・ポリドリの”Vampyre"だというのが、今日では定説になっています。
(創元推理文庫版「吸血鬼ドラキュラ」解説より)

とされているこの作品ですが、成立には、以前ご紹介した、メアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」と深い関わりもあるものだそうです。

簡単に書くと、メアリ、シェリー、バイロンらが集っていた時に、おのおの恐怖小説を書こうという話になり、結局作品を最後まで成したのはメアリひとりだったのですが、その際にバイロンが書きかけで止めてしまったものにヒントを得たのがこのポリドリの「吸血鬼」だとか。
(ポリドリはバイロンの主治医でした。)

◆で、読んでみたところ。

最初はよくわからなかったのは「吸血鬼ドラキュラ」の時と同じでした。なんでかな。

でもやはり「ドラキュラ」の時と同じく、再読すると(短い話なのですぐに再読)、なんとなくわかってきました。

整った容姿の反面なにやら陰鬱な印象のあるルスヴン卿は、その一種異様な雰囲気のゆえにかえって、爛熟し過剰に刺激を求めるイギリス社交界では人気があり、女性たちは彼の気を引こうと熱心でした。
そんな中、ルスヴンに興味を持った裕福な(そして若干夢見がちな)若い男性オーブレーは、彼と共に大陸に旅に出ることにします。

行く先々で間近に見るルスヴンの態度は、異様さを増すばかり。彼が旅立つ前にイギリスでやっていた陰険な所業を知ったオーブレーは、彼と別れてひとりギリシャへ移動します。そこで出会った素朴な娘から聞く、吸血鬼の怖ろしい話。とはいえあまり本気で相手にしていなかったオーブレーですが、ある夜、その娘が吸血鬼の手にかかり、血管を食いちぎられ殺される場面に遭遇します。

ショックと格闘のダメージで臥せったオーブレーを介抱したのは、たまたま当地に寄ったルスヴンでした。彼の誠実な態度に気持ちを変えたオーブレーはふたたび共に旅をすることにします。

ある日、無謀にもたいした供も連れずに出掛けたふたりは、細い谷道で賊に襲われます。銃に撃たれたルスヴンはオーブレーにある誓いをたてさせて、息をひきとるのですが・・・。

落ち着いて読むと(笑)確かに怖い話です。
発表されてすぐに一大センセーションを巻き起こしたのだそうですが、新しい恐怖のキャラクターとしてほとんど初登場した「吸血鬼」は新鮮で“魅力的”だったでしょう。
すぐに芝居にも仕立てられたそうで、それもブームを巻き起こした要因のひとつだったのではないかと考えられます。

しかし作品それ自体は、ポリドリが文学者ではなく、すぐれた怪奇作家でないことを立証して終わったようです。
(創元推理文庫版「吸血鬼ドラキュラ」解説より)

とされていますが、わたしには、この作品が「すぐれている」かいないかの判断はよくつきませんでした。今後西洋の古典的文学や怪奇文学をもう少したくさん読んでいくと、わかってくるんじゃないかと思っています。
(また、読む本が増えていく。)

忠実に映像化したらどうなるかな・・・と考えてみたら、ずいぶんイメージがわいてきました。けっこう面白い話かもしれない。

今回は、創元推理文庫「幽霊島(平井呈一怪談翻訳集成)」でこの小説を読みました。全十三編のアンソロジー。訳者平井呈一さんの仕事をまとめたものでもあるようです。平井さんは「吸血鬼ドラキュラ」も「カーミラ」も翻訳されていますし、わたしは「ドラキュラ」は平井さん訳で読みました。

この本からは取り急ぎ「吸血鬼」一篇だけ読み終えてこれを書いていますが、他の話もあれこれ面白そうです。

さらに当書には付録として巻末に、平井さんによる対談やエッセー、書評などがどっさり載っています。これを読むのも楽しみだなあ。
いろんなことが知れそうです。

全部読み終えたら、ここか別ブログにまた、少し紹介文を書こうと思っています。

◆追記

吸血鬼自体についてとても詳しいブログを見つけました。
「ドラキュラ」や「吸血鬼」、ポリドリやバイロンについても詳細な記載があります。
ご参考までにリンクを貼らせていただきます。

ノセールの吸血鬼解説ブロマガ
吸血鬼の元祖はドラキュラではない!吸血鬼ルスヴン卿こそが吸血鬼の始祖!【吸血鬼の元祖解説①】





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