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№17 浮き浮き・ワクワクの夏

2022年8月10日

前々回「緊張の夏、挑戦の夏」と題し、息子たちがキッズスイミング(短期3日間)に挑戦しますとお伝えしておりました。今回はその報告版をお届けします。

待ちに待った1日目。息子たちのテンションが高い中、母は人工内耳用の防水ツール「アクアプラス」を用意します。これまで、幼稚園の水遊びなどでチャレンジを試みたものの、自宅以外で着けたこと無し。今日こそは、という念、いや思いを込めて話します。

母「これを付けたら、プールでも聞こえるから、とっても楽しいと思うよ!」

次男「うん! あおいじんこうないじ(アクアプラス)つける!」

親子ルンルンで教室へ向かい、今一度プールを見学。母はガラス越しに応援することを再確認し、ロッカーで着替えます。補聴器を外して、人工内耳(アクアプラス)を付け替えて、いざ出陣!と思った瞬間、次男の顔が曇ったのです。

次男「きこえない? きこえないよ?」

なぜか、うまく作動しません。家ではうまくいってたのに……。あちこち触りますがやっぱりダメ。こういう時は自分が落ち着かねば!といい聞かせ、作り笑いをし笑、次男に補聴器を付けてから話しかけます。

母「青い人工内耳が、壊れているみたい。今日は、何もつけないで、プールできるかな?」

次男「き こ え る ほ う が い い」

心細い表情で、小さな声で、でもはっきり言いました。

何てことをしてしまったんだ、最悪だ私。こんなに楽しみにしていたのに、こんなに不安な気持ちにさせている。明日出直す? 自宅から新しい電池を持ってくる? でも30分はかかるし、最初のレッスンから遅れるのは、もっと良くないかも。さっき家では動いたじゃん? バカヤロー自分!

1人落ち込んでいた時です。

長男「僕、先に行ってるね~!」

お、そうだそうだ。ごめんね次男にばっかり……。

次男「ぼくも、いきたい。ぼくも、いく」

母「聞こえないけど、お兄ちゃんいるから。困ったら、お母さんすぐ迎えに行くから。先生にも伝えておくね。お兄ちゃん、待って~!」

兄「弟もいくのね。補聴器外してるのね。わかった~!」

コーチに予定していた人工内耳は装用できないため、聞こえない状態で教室に参加することを伝え、息子たちと離れました。大丈夫なのか? 大丈夫なのか?

結果。

心配していたのは、母だけでした。最初こそ緊張していた表情を見せていたものの、徐々にプールと仲間たちに溶け込んでいきます。笑顔も増え、帰る頃には「あしたもプール!」と大喜び。コーチのジェスチャーあふれるやさしくユニークな指導や、同年代の子どもたちとのやりとり、兄と同じグループという安心感が彼をそうさせたのでしょう。

充実感にあふれ帰宅し、人工内耳を再度チェックしたところ、なぜか普通に動くんです。ホッとしたやら「つけてたらもっと楽しめたのに……私のせいだ~!」とネガティブになりかけていたところ、次男が言いました。

「つけない。あおいじんこうないじ、つけないよ。」

え?いやいや、何をおっしゃるうさぎさん。明日になれば気分も変わるかも?と思いそっとしておきました。

翌朝、プールの準備中のことです。

次男「あおいじんこうないじ、おうちにおいていく。ないほうがいい。」

母 「聞こえなかったから怖いかなと思っていたけど、怖くないの?」

次男「たのしい。プールたのしいよ。」

あくまで想像ですが、付け慣れていないため、煩わしいと思ったのかもしれません。また、聞こえ方が(音量含め)異なると聞いたことがあるので、それに違和感を感じたのかも。本人が強く言うだけあって、2日目も、そして最終日3日目も精一杯楽しみ、充実した時間を過ごしたようでした。ビート版を使ってコーチがサポートしてくれると、プカプカ水に浮けるようにまでなったのです! これぞ浮き浮きの夏♡

「聞こえないと怖いんじゃないか」

「聞こえないと不安なんじゃないか」

「聞こえた方が(もっと)良いのではないか」

次男が難聴と診断されてから、何度となくこのことを思いましたし、これからも何度も思うでしょう。しかしそんな心配をよそに、置かれた環境で精一杯楽しむ次男。何たるたくましさ、の一言です。そして静かに支えてくれた兄よ、ありがとう!

結果的に、長男のみ入会しました。あいにく次男は、療育のスケジュールと重なってしまい今回のタイミングは断念しましたが、たくさんの学びをありがとう。

ワクワクの夏は、まだまだ続きます!

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