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紙面の常連?「決まりもの」


当たり前の話ですが、日々の新聞には政治、経済、事件・事故などさまざまなニュースが載っています。そのため同じページを開いたとしても毎日全然違う見た目をしています。

一方で、毎日決まってだいたい同じ場所に掲載されるものもあります。それが「決まりもの」です。もちろんこれらも僕たち校閲記者がチェックしています。今回は紙面の「常連」である決まりものを紹介します。


季節によってさまざま

「首相の一日」や「中日春秋」など季節に関係なく毎日掲載されているものもありますが、多くはその季節に応じて変わります。

春には「桜だより」が載ります。発行エリア内の桜の名所の開花状況が「つぼみ」「満開」「散りはて」などと示されています。

2023年3月27日付朝刊

自然のものなので刻一刻と開花状況は変化していくのですが、まれに
・「前日は『散りはて』だった場所が『満開』に戻っている
・「まだ『つぼみ』なのに『満開近し』になっている」
というミスが見つかります。せっかく見に行ったのに全然咲いていなかった、散った後だったというのは悲しいですよね…。

続いては「熱中症予報」。新聞が届いた日の熱中症リスクが県ごとに色分けされています。

2023年8月26日付朝刊


この色分けが間違っていることがあります。その日が「危険」で赤にするべきところが、黄色の「警戒」になっていた…なんてことがあってはいけません。環境省の熱中症ホームページをもとに確認します。

以前はスキーのハイシーズンに「スキー場だより」が載っていました。各地の主なスキー場のコースの積雪深やスノーボードの利用可否が書かれています。あるスキー場が臨時のメンテナンスで一部コースが封鎖されているときに、全面での滑走が可能な「◎」がついていたケースや、積雪深が間違っていたこともありました。

2022年1月20日付朝刊

エリアならではの「決まりもの」

初夏から秋にかけて、愛知、岐阜両県で行われる鵜飼。実は鵜飼の決まりものもあります。その日の出船時間が列記されています。

2023年10月11日付朝刊

北陸中日新聞では、富山向けだとプロバスケットボールNBAの八村塁選手、大相撲の朝乃山関の連日の成績が載っています。一方、石川向けでは大相撲の大の里、遠藤、輝、炎鵬というように、ご当地スポーツ選手の成績も決まりものとして毎日載るためチェックしています。

北陸中日新聞 2023年11月25日付朝刊

新型コロナも…

連日のニュースで目にしていた新型コロナウイルス関連。23年5月に感染症法の5類に移行される前は、コロナだけでも多くの決まりものがありました。

東海3県の日ごとの感染者数、病床使用率、前週比の増減、エリア6県(愛知、岐阜、三重、長野、滋賀、福井)のワクチン接種率…。

2022年1月20日付朝刊
2022年1月20日付朝刊

ほかにも共同通信社提供のCGなど、コロナ関連の決まりものだけでかなりのスペースを埋めていました。季節を問わず毎日必ず載っていたので、まさに皆勤賞…。前週比の増減を示す矢印の向きが要注意ポイントだったと記憶しています。

そんなコロナ決まりものセットも5類に移行してからは週1回の定点把握の結果を載せるだけになりました。入社してからずっとコロナだらけだった身としては5類移行後の紙面にしばらくは違和感が消えませんでした。

小さくても大事

これまで紹介してきた「決まりもの」たちは一つ一つは大きいものではなく、ほとんど目を通さずにいる読者もいると思います。実際に校閲作業中も「こんな字も小さくて影の薄い表に需要があるのか」と思っていました。

しかしある日、編集作業の都合でどうしても載せられなかった決まりものがあり、その朝刊が届けられた日に読者から「〇〇が入ってないけどどうしたの?」との声が寄せられました。こんなにすみっこの小さい表でも見ている人がちゃんといるんだと気づかされました。

実際、桜だよりやスキー場だよりをみて予定を決める人もそれなりにいるようです。コロナの感染状況のCGを見て外出を考えているという人もいました。

読者の一日にかかわる大事な「決まりもの」。小さいけれど、果たしている役割は大きいのだと読者から学びました。