詩 『カウント零』 (2017)

カウント零

はたはたと
風を鳴らして鳥は去る
窓枠の形に切り取られた空
いくつかの影を追う、

二秒

ひらひらと
手を振り別れる
視界から消えたわたしが
あの子の手元のスマホ画面に
存在を忘れられるまで、

一秒

古いレコードの針が
刻まれた溝を撫でなかった
黒い刻印に封じ込められたままの、

零秒。

塗り替えられていく
再開発の駅前に
横たわっていたあのひとは
今はもう、
いない

消えた欠片たちは
追憶の中に
点々と痕を残して

数を喪失していく秒針   刻々と
姿を歪め
ゆらり   ゆらり
風にはためくのは。

視えず、
わたしは
待っている

古びた文字盤には
零が   ない
終わりもなく
昨日が駆けてゆく。

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