詩 『夜間高速、疾るうたかた (リーディングver.)』 (2017) 【動画あり】

夜間高速、疾るうたかた

葉脈に水を通すように
侵食、這いつづけ
温度を運ぶ
(或いは運ばない)
ひかりの流線は
都市の青い血管
つめたさが肌を刺し
神経は撫でつけられ
絶え間なく 伝達を繰り返す

埋まらない隙間
記憶の距離に数値はなく
(交通情報をお伝えいたします)
抑制を効かせた感情
誰でもない何かに向かい
車体は、無機質に滑る

手をのばした
指先の 沸騰した黒い
深いアスファルト、
駆けてゆく
昨日の街並み、
横目に映った
ひらひらと舞うシーツ
に、抱かれた
この先は もう
眠りすら遠ざける

 抱かれた
 シーツ
 深いアスファルト
 沸騰した黒
 「怒り」
 車体は
 誰でもない何かに向かい
 感情
 記憶の距離
 埋まらない隙間
 「哀しみ」
 伝達を繰り返す
 神経
 青い血管
 温度
 侵食
 這いつづけ
 疾る 疾る
 うたかた
 「触らないで」

 疾る
 侵食、這いつづけ
 温度
 青い血管
 神経
 伝達を繰り返す
 埋まらない隙間
 記憶の距離
 感情
 誰でもない何かに向かい
 車体は
 沸騰した黒
 深いアスファルト
 シーツに
 抱かれたら
 この先は もう
 眠りすら遠ざける

どこまでも
疾る、躰を
(出口は10万km先左手)
ここに留めて

入り口のない始まりだった
乗り込んでしまえば
出て行くことも叶わないと知った
(追越車線は右側です)
道に沿えばどこかへ
運ばれてゆく、というのは
願望の探り当てた
淡いまぼろし

ヘッドライトが、
ふたつ
浮き上がる 孤独を
照らし出す
(制限速度を解除します)
(出口は、ありません)





【動画】

昨年リーディングしたしたときの動画です。
スラム(大会)ですが即興音楽とのコラボです。
本作は最初に書いた作品に、音楽とのコラボを想定して手を加えたバージョン(が、上記のもの)になります。

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