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3−6歳児:言語聴覚士がオススメする絵本「三びきのこねこ」

言語聴覚士が実際の療育に使っているオススメ絵本を紹介するシリーズ。今回は「三びきのこねこ」(ウラジミール・ステーエフ作・童話館出版)です。*同名の絵本もあるのでご注意。

オススメポイント① 繰り返しのストーリーが楽しい

白・黒・灰色のこねこがねずみを見つけて追いかけて……かえるを見つけておいかけて……と、同じパターンの冒険が繰り返されます。この「繰り返し」が実は子どもにとってとてもわかりやすいんです。「うちの子、おとなしく絵本を聞いてくれない」というお母さんには、この絵本のように「繰り返し」のあるものをオススメしています。繰り返しがあるということは、次のパターンが予想できるということなので、子どもにとって絵本の理解がしやすいということにもなります。

また繰り返しの利点として、何度も読んでいるうちに「次は何を追いかけるの?」「かえる!」というふうに、内容を憶えて楽しく会話しながら読み進めることができる、ということもあります。

オススメポイント②想像するのが楽しい

白・黒・灰色のこねこは、小麦粉が詰まった缶に逃げ込んだねずみを追いかけて、自分たちも缶の中に飛び込みます。出てきたこねこたちの体は全員真っ白。あれ? 黒と灰色のこねこはどこに……? その答えは……実は書かれていません。なぜ白くなってしまったのか、そのオチはストーリーから想像することになります。この「書かれてないことを想像する」のが楽しいですし、想像力を養うことにもつながります。

余談ですが、私はこの本を自閉症のお子さんの療育によく取り入れています。自閉症の特徴のひとつに「想像力の欠如」というのがあり、教科書などの文脈を読み解くのが苦手というお子さんもいます。この「書かれていない・見えない」ストーリーを学ぶ、という点でも、この絵本は優れていると思います。

オススメポイント③要約の練習にも最適

子どもの言語力を育てるために、絵本の要約を求めることがあります。「いつ」「どこで」「誰か」「何を」「どうした」のうち、「誰が=こねこ」、「何を=ねずみを」「どうした=追いかけて缶の中に入った」という説明が、この絵本では可能になります。もちろん、そのあとのオチも大事です。

読み終えた後「どんなお話だった?」とお子さんに尋ねてみるとよいと思います。はじめはひとりですべてを要約するのは難しいお子さんでも、大人が「誰がでてきたの?」「何をしたの?」「どうなったの?」と問いかけてあげれば答えられるかもしれません。しかも①で述べたように繰り返しのストーリーになっていますから、要約もその他の絵本に比べて容易です。何度も読み聞かせて質問することで、いずれはひとりでこの絵本の内容が語れるようになると思います。

繰り返しのある有名なお話はほかにもたくさんあります。3匹のこぶた、おおきなかぶなどなど。長く読み継がれている絵本には、子どもに好まれるだけの理由があるということですね。

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