ショートショート 「彼のマルガリータ」
「マスター。お勘定」
カウンター席に掛けていた一見の客がマルガリータの残りをキュッと飲み干して席を立った。
「ありがとうございます。1,900円になります」
マスターが微笑を漏らしながらそう言うと、客はなぜか表情を曇らせた。
「…ど、どうかなさいましたか?」
「納得が行かない」
「勘定に…ですか?」
「ああ」
「どうしてですか?」
「胸に手を当ててよ〜く考えてみろ」
「んん…?」
「分からんのか?」
「えーっと、えーっと…。あ!」
「おかしいだろ?」
「ええ。いや、あ