見出し画像

ふたりの卒業式。

3歳差でふたりの子供を授かった時、周りから「卒業と入学が重なってしんどいよ」の声が届けられたものだ。
まだ幼子のふたりを育てていた私は、そんな先のことを不安がっても仕方ないじゃないか、このタイミングで子供たちに恵まれたんだからそれはそれでいいじゃないか、と漏らしていた。
が、ついにその時はきた。

今月は中学校の卒業式と小学校の卒業式が重なり、来月はダブルで入学式がやってくる。
出費がすごい(主に制服)。
来月のカード請求はとんでもない額を刻むだろう。仕方ない。キリキリ働くのみ。
そんな私のキリキリをよそに、ふたりは無事に卒業式を終え、春休みをまったりのんびり過ごしている。

中学の卒業式はギリギリまで行けるかどうか分からなかった。
当の本人が行くのをギリギリまで迷っていたからだ。

中学生活最後の最後に人間関係で悩んだ彼女は、受験勉強も相まって学校へ行かない日がちょくちょくと増えていった。
それなりに悩んだけど、無理に学校へ行かせることはしなかった。嫌なことに立ち向かうのも大事じゃない?と一部の人は言ったりしたが、大部分の人からは「休みたいなら休ませてOK」という意見をいただいた。その節はありがとうございました。

無事受験も終わり、本人の中で気持ちの折り合いがついたのか「卒業式行こうかな」と言ってくれた時、内心ものすごく喜んだ。小躍りしたいくらい喜んだが、平静を装って「わかったよー」と返事した。本人には何も言わずにいたけど、本音は親として卒業式に出たい気持ちがあったのだ。

無事式が終わり、本人たちが門出式の準備で退場してから、学年主任の先生が何かを配り出した。
親への感謝をサプライズで伝えるという手紙だった。
早速中身を開くと、内容は娘らしく非常にさっぱりしていた。でも「学校休んでいいよって言ってくれてありがとう」と書かれてたのには、少し泣いた。悩んでいた頃の自分に見せてあげたい。

中学の卒業式は体調を崩して参加できなかった夫と、小学校の卒業式は共に行くことができた。
9年間通った小学校とも、これで完全にお別れだ。

まず受付で1円の返金。
どうやら先日の校外学習で集めた費用が1円相違していたらしい。
ひとりひとりに返すため、小さなジップ付き袋にうやうやしく収められた1円。
1円返すために1円以上の手間暇がかかっている。もうそのまま取っといてくれたらよかったのに。誰も文句言わないのに(多分)。でも、組織というのはそういうわけにいかないことも重々承知している。

中学と比べて人数が少なく、1人ずつゆっくり入退場。男女ともに和服の子が目立った。娘が卒業した時よりも多い。
煌びやかな髪型で笑顔の女の子たちを見ると、朝早くから大変だったろうに…と各ご家庭の苦労を勝手に労いたくなった。

終わった後は友達と集合してスマホで写真を撮りまくり、その後祝賀会で美味しいご飯を食べに行き、更に公園へ向かい日が暮れるまで遊び続けた息子。
体力がありあまっている。
こっちは式だけでぐったりだというのに。若いってすごい、無限に遊べる。

そんな私は卒業式終わり、夕方まで自由時間がとれたので街へアートを観に少しだけ出かけた。

まだまだ寒い風が吹きつける日だったのに、昼間はコートが少し暑いくらいに感じる。
屋外スケートリンクはいつの間にか営業を終えて後片付けが始まっていた。

ふと周りを見渡すと、この日はあらゆる学校で卒業式が重なっていたらしい、街を行く袴姿のひとが次々と目に飛び込んでくる。
幼い子も、大人の年齢のひとも、みんな笑顔だ。
その背中から、揺れる袖から、美しい髪型から舞う大輪の花たち。
季節を運んで春を告げているかのようだった。

我が家はスーツと制服の卒業式だったけど、和服の記念写真だけは撮ろうかな。
みんなで出かけたら、そのままお花見するのもいいな。写真を撮る頃には、きっと桜が綺麗に咲いている。

子供たち、街ですれ違ったひとたち、みんな、卒業おめでとう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?