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女性活躍推進、の違和感。

そこそこの規模の企業に勤めている。
私はこの会社しか勤務経験がないので他所のことは分からないけれど、年々加速する違和感を抱えながら働いている。

『女性活躍を推進します』という言葉。

そんな言葉が聞こえてくるようになったのはほんの数年前から。
入社して早20年以上。
昔の話をするのもなんだけど、新入社員の頃は仕事に「お茶を沸かす」「男性営業にお茶を出す」「灰皿の吸い殻を捨てる、灰皿を洗って綺麗に拭く」というものが平然とあった。
毎朝それをやるのが女性社員の日課だったのだ。
営業は全員、自分の席で煙草をがんがんに吸っていた。今じゃ考えられないけれど、それが当たり前の景色だった。
灰皿もなんで毎日毎日吸いもしない人達で綺麗に片付けているのか、今なら「おかしい」と言える。でも、それがおかしいとすら当時は思わなかった。それが当たり前だと教えられたから。
飲み終わったお茶は当然のように女性が下げて、洗って、拭いて、次の日のために戸棚に片付ける。延々とその繰り返し。

今でこそ事務職だけど、入社したての私は当時まだ珍しい営業担当者だった。女性営業は「レディ」と呼ばれ、定期的に本社に集められてレディ会議なるものが開かれた。
レディ会議には、通常の男性営業が集まる会議よりも偉いおじさま達が数多く集まり、その後の懇親会も長々と深夜まで行われるのが常だった。二次会のカラオケまで行って、手拍子したりおじさまが好きそうな若干古い歌を歌ったりしてました。はい。今にして思えば摩訶不思議な光景。今も根強くどこかに残っていそうな風景。
レディ会議は楽しいねぇ、なんてにこやかな声が毎回聞こえてきた。それを言うのは決まって男性だったけれど。

やがて分煙化がはじまり、女性営業の数も増え、個別の会議もなくなり、ゆっくりと確実に変化していった。良いか悪いかといえば、もちろん良い変化だ。

が。
手のひらを返したように叫ばれる「女性活躍推進」。
これは一体なんなんだろう。

今は女性の方がチャンスだから…
出世できるうちにしておくべきだよ…
女性の方が注目されるからね…

そこかしこから聞こえてくる、こんな囁き。
はっきり言って気持ちが悪い。
なぜ男か女かで線を引かれて決められるのだろう?
いつまでたっても「人」ではなく「性」が付きまとう。

女性管理職の割合を増やそう、と国が言っているから会社だけが悪いとは言い切れないけれど。
今は女性の時代だよ、という上司につい無表情で返してしまう。
必死さを通り越して滑稽さすらある。
人事制度の裏まで見ることは叶わないが、一度聞いてみたい。
評価をつける時、僅かでも性別を意識しているのかどうか。
今は女性の管理職をなるべくつくらないといけないから、という考えで選ばれてはいないか。
もし少しでもその思考があるのなら、それは個人ではなく性別で優劣をつけていることになる。

私は新米管理職として仕事をしているけれど、「女性でラッキーだったね」とは決して言われたくない。

今でも細かいところで男女差はある。
男性は大きい仕事、女性は細やかな仕事。
そんな分け方がまだ活かされている、私の職場でも。
男性が女性がと声が聞こえるたびに「それ性別関係ありますか?」と地道に石を置く。
こつん、と爪先に当たる程度かもしれないけれど、置かないよりいいと信じて続けている。
生まれた性別で役割が決まっている、ことに疑問をまず感じてほしい。
大きい世界をひとりで変えるのは難しい。まずは自分の目の前からだけでも、気づきと変化が起きるようにしていたい。
後に続く人たちが、少しでも心地よくいられるように。

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