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お風呂に浸かる日。

お風呂に浸かるとお酒が抜けるってほんとうなんだろうか。
酔っ払った翌朝にお風呂へ入る。と、いつも思い出すのは『のだめカンタービレ』で千秋が「風呂で酒抜いてこよ」というシーン。なんてことない場面だけれど、お風呂の湯気に混じってアルコールが飛んでいくのを千秋先輩と共に浮かべる。
本気の二日酔いでは湯船に入るだけでも決死の覚悟になる。
今回はさして飲んでいない。だから回復も早い。

「もう少し気を遣ってほしい」と数日前に真正面から批判を浴びせてきた、例の相手から誘いがあった。ご飯行きましょう。飲むのもいいですね、と。
相手は普段お酒を好まない。たくさん飲めず、すぐに寝てしまったり気分が悪くなったりする。そんなひとが「飲みましょう」と言うのは、精一杯の「この前はごめんなさい」なんだろうと解釈した。

やたらと威勢のよい呼び込みを浴びて、串焼きの店にするする入る。店員は皆んな女性で、誰もかれもが元気を溢れさせて迎えてくれた。
あまりの満面の笑顔に魅入ってしまい、普通サイズからメガサイズに注文を変える。なんだか一昔前のおっさんみたいだな、と自分を揶揄したくなった。ルッキズムと言われたら反論できない。だけど終始心から素敵だと言える接客を受けて気持ちが良かった。

元々打ち解けている相手と雪解けした安心で、互いにお酒も食事もすいすい進む。それでも年を重ねた分、食べる量はぐっと減っている。最後に追加した串盛りが余計だったな、と重たい胃を抱えてほんのり後悔した。

ほろ酔いで帰宅すると、部屋から息子が顔だけ出して「おかえり」と声をかけてくれた。
どうやらお風呂上がりのようで顔から下は真っ裸だ。寒いだろうに、わざわざ顔を見せてくれるのが愛おしい。

彼もここ数日、なんとなく続いていた不機嫌が抜けて、元からある優しさが戻ってきた。
私の不調が家の中に伝染していたんだろうか。いや、でも夫はいつも通りだった。むしろ鬱々としている私に、期間限定アイスティハイボールや、海苔125%と書かれた美味いポテトチップスや、シュークリームをせっせと与えてくれた。太った。彼は「寒い冬にお酒飲むなんて意味が分からない」と、ひとを太らせておきながら冬場はホットコーヒーしか飲まない。

スマホの画面を確認すると、スクリーンタイムの通知が来ている。
画面を見ている時間は、先週から18%増えたらしい。細かい。時間が増えることに否定的な通知。目の健康を気にしてくれているのだろうけど、スマホの立場だったら、自分のことをもっと見つめていてほしいと思わないんだろうか。18%も増えましたよ!みたいに、喜びを表してくれたって良いのに。

そういえば娘がいつのまにか、お風呂でスマホが操作できるケースを手に入れていた。彼女のスクリーンタイムは日に日に増えている。受験勉強だいじょうぶなの、と聞きたい気持ちをぐっと堪えて、先にお風呂へ向かう。


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