「朝のベランダ」で登場人物が「つよがる」、「傘」
2011.03.18 Friday
「おー良い天気」
感嘆する声で目が醒める。
だるい身体を起こして、声のする方へと歩いて行くと彼が
ベランダで洗濯物を干しているのが見えた。
「俺も手伝う……」
ノロノロとした動作で手伝おうとすると、手から奪われてしまう。
「無理すんなよ」
「だいじょーぶだって」
強がるような言葉を言うと、顔が近付いてきて
耳元で囁かれる。
「……身体、辛いんだろ?」
「っ!」
さらりと恥ずかしいことを平然と言う彼を少し恨めしく思いながら
俺は折りたたみ傘を広げる。
「これくらいならいいだろ?」
昨日の雨で役に立ってくれた傘だ。
これがなかったら、彼ともこんな関係にならなかったかもしれない。
いわば、懸け橋になってくれたアイテムなのだ。
彼も傘をしみじみと見つめている。
――もしかして、同じ事を思ってくれてる?
少女マンガの主人公の様に、胸がドキドキと鳴った時、
「ああ、大事に扱ってやらなきゃな。俺たちのキューピッドだもんなあ、こいつ」
少女マンガはマンガでも、どうやら彼のセンスは一昔前で止まって
しまっているらしい。
「……恥ずかしい奴」
口に出しては言わないけれど、同じようなことを考えてたなんて
絶対に内緒にしておこうと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?