「昼の神社」で登場人物が「約束する」、「メール」

2011.04.02 Saturday

「変わってないなあ……」

この街を離れて一年が経つ。
それくらいの年月でこの神社が変わるわけがないのに、
久しぶり過ぎてこんな言葉しか出てこない。
本堂も、その横にある色の褪せた絵馬をかける場所も
自分が最後に訪れた状態のまま。

「おっと、忘れちゃいけないよな」

つい絵馬の方に足が向きそうになったけれど、
先に神様にお参りをするのが礼儀だろう。
チャリン、と小意気な音を立てて消える賽銭を見てから
ゆっくりと目を閉じると、ポケットに入れた携帯電話が揺れた。
たぶん、あいつからのメールだ。
取り出し、画面を見てから電話をかける。

「よお、お帰り」

笑いを含んだ声が電話越しに聞こえた。

「ばーか、社務所から見てるならメールなんてしてくるなよ、
通信代がもったいないだろ」

「だって約束だろう?」

「え?」

「決心が付いたら、お前から来てくれるって約束。
だから、俺はそっちには行かない」

「律儀なやつ」

「心が広いと言えよ、こっちは1年も待ってるんだぜ」

「じゃあ、あと数分くらい待ってよ」

笑いながら神様に向かって一礼すると、
社務所に向かって階段を勢いよく駆け下りた。

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